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バンド・ワゴンのあのレビュー・感想・評価

バンド・ワゴン(1953年製作の映画)
4.3
かなり無理のある怒涛のラブストーリーを、滑らかで洒脱なカメラワークで無理矢理まとめ上げたスーパー力技エンタメミュージカル映画でした。

突然歌い出す意味がよく理解できないため、ミュージカル映画はあまり好きではないですが、本作は舞台も舞台裏も全て舞台にしてしまうシームレスな演出によって、全く違和感を感じず楽しむことができました。特に、トニーとガブリエルが、一人自分の世界に入っているコルドバの部屋を挟んで繰り広げる対立が、まさに舞台的な配置と、ミュージカルのリズムと、映像ならではの視点を掛け合わせた神がかり的な面白さがありました。舞台が失敗してやけになって歌い出すところも、まさに深夜テンションでハイになった感じで、リアリティがありました。

YouTube大先生におすすめされた公園でのダンスシーンに惹かれて観ましたが、トニーらが巡業で積み上げたミュージカルのナンバーのラストを、ガブリエルと飾ったサスペンスミュージカルも良かったですし、ラストで客の入りや盛り上がりをあえて見せずに、仲間がこぢんまりと揃って出迎えることで劇の成功を見せたところが本当に流石でした。

という訳で、どこまでも力みを感じさせない究極的にエレガントなミュージカルでした。
あ