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真夏の夜のジャズの継のレビュー・感想・評価

真夏の夜のジャズ(1959年製作の映画)
4.0
暑中お見舞い申し上げます。
気温が下がらない夏の夜、涼しげな映像は如何でしょう(^^)!

ロードアイランドの南にある港町、ニューポートで開催されたジャズ・フェス('58年)の記録映画。

監督はVogueの写真で著名な写真家バート・スターン。
そのせいかミュージシャンの指先や口元を撮らえたショットより、
寧ろアメリカズ・カップのヨットや美しいリゾートの光景、最新のモードに身を包んで避暑に訪れたヒップなオーディエンスの姿が印象的です。

フェスの、演奏の記録と言うより
感じるのはスノッブでお洒落な一般的なジャズのイメージを “真空パック” しようとしたかのようなコンセプト。

https://youtu.be/DcMmVGrzpy8

↑はそんなジャズの魅力に溢れたアニタ・オデイのステージ(約9分)。
超スローテンポなイントロから 2度のギアチェンジ (2分を越えた頃と3分半を越えた頃) を経てテンポを上げ、聴衆を自分の世界へ引き込んでゆく “sweet georgia brown” 、
ハイテンポに飛ばす “tea for two” はザックリしたスキャットやドラムスとのユーモラスな掛け合いが楽しくて。最初アンニュイに頬杖ついてたオーディエンスはどこへやら、終わってみれば皆(^∇^)笑顔で拍手喝采!
クラシカルなマイクロフォンと美しいアニタの横顔の構図もお洒落にキマり、ジャズの魅力を理屈抜きに伝えるステージになってます💯!

因みにこの年はコルトレーンやビル・エバンスを擁したマイルス・デイビスのセクステットも出演していたものの本作には未収録。
演奏はマイルス名義の公式ライヴ盤があるけれど、自分は “ミセラニアス・デイビス” という、タイトルからして怪しいブートレグ(海賊盤, 非合法)を渋谷マ××ズ(海賊盤屋, 非合法(笑))でゲットして、その音質の悪さと共に'55年の演奏だったのにショックを受けた苦い記憶が😂(笑)

レイジーな昼の部から転じた夜の部で、ひときわ異彩を放つのは知的でアブストラクトなチコ・ハミルトンのクインテット。
何とも形容し難い幾何学的なフレージングでフルートを吹き、聴く者を揺さぶるのがエリック・ドルフィー。“動くドルフィー” を観たのは本作が初めてでしたネ🔰。
バッハの無伴奏チェロ組曲を弾いているのもここのベーシストで、全体にピースフルな雰囲気が漂うフェスにあってセロニアス・モンクとはまた違う意味で硬派な存在感を醸し出してたように思います。

原題は『jazz on a summer's day』.
今観て懐古的であるのは、本作が社会的に緊張を孕み斜陽してゆく直前の、成熟したリッチなジャズ (もしくはアメリカの) “最後の空気”をも内包しているからかもしれません。
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