ケーティー

恋愛戯曲 〜私と恋におちてください。〜のケーティーのレビュー・感想・評価

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三重の劇構造など、いかにも演劇らしい脚本の作品。
恋に落ちないと仕事ができないという脚本家をあの手この手で説得し、テレビドラマの脚本を書いてもらうという設定は面白く、深田恭子さんの可愛さと椎名桔平のダサい男ぶりも悪くない。

しかしこの映画は、おそらく元の舞台がもっていた面白さをうまく消化できていないのではと感じた。むしろ、無難に映像化したことで、かえって安っぽい連ドラのようなつくりになってしまったのではないか。

舞台版を観たことがないので断定はできないが、おそらく舞台だと立ち所に劇中劇が表れるハチャメチャな面白さ、また、それにツッコミを入れるように現実を見せていく可笑しさなど、勢いのある面白い作品だったと想像できる。

しかし映画では、はっきりいって劇中劇の設定がそこまで奇抜ではなく、弾けきれていない。その結果、作品としての勢いを失うことで、主人公二人のドラマの描き方の弱さが露呈し、映像だとリアルになる分、さらに印象づいてしまったのではないか。

この作品は映像化するにあたって、もっと方向性を定めて振り切った方がより面白くなったように思う。
例えば、クドカン作品のような弾けきった設定や展開でケレン味たっぷりに描く作品にする。あるいは、人間ドラマの面白さで見せるなら、もっと主人公二人のやりとりを深堀し、その会話の面白さでもっと見せていくべきである。
作品の題材とキャスティングがよいだけに、どこかもったいない作品である。