くすきゃっする

路地へ 中上健次の残したフィルムのくすきゃっするのレビュー・感想・評価

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差し込まれる中上健次のフィルムの、路地の黒さ、空の白さにドキッとする。

かつて「路地」であったとされる場所が映される。しかし、ただ住宅地が広がるだけである。果たしてここに「路地」と呼ばれた場所が本当にあったのだろうか。
その瞬間、中上健次のフィルムは、「路地」の黒さ、空の白さをはっきりとしたコントラストで映しだす。中上健次のフィルムは、自らの発話を禁じられたかのようにただ「路地」の輪郭だけを刻むことによって、その存在を記録していた。