シートン

路地へ 中上健次の残したフィルムのシートンのレビュー・感想・評価

4.0
兄妹心中の語りが流れ出した瞬間の画面の訴求力。トンネルとクルマ、地の果てへ誘う青年。音楽(大友良英、坂本龍一)。そっけなく作り込まれた画面と構成が見事だ

流れ出す老婆の語りは録音であり、井𡈽が朗読するのは、原稿である。それは、痕跡=エクリチュールでしかない。生のものではない。だが、その限界を中上健次は知っていたし、青山真治はそれとの距離を知悉した上で作品化しつつ、乗り越えようとしている。中上健次への愛惜と、中上亡き世界の受容と肯定を感じる。

そっけないが、ただのドキュメンタリー、あるいは、単なる中上のフィルムの紹介にとどまらない強度を持ち合わせた作品である
シートン

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