痛快戦争アクション映画の傑作。そしてその奥底にはやはり軍部に対する岡本喜八の批判精神が貫かれている。
この映画が好きなのは全体のトーンが明るいからだ。途中、何人か重要人物が命を落とすが、それでも見終わった後は不思議と嫌な気持ちにならない。
中国戦線でのお話。陛下から拝領した軍旗を持った部隊が全滅し、その軍旗を捜すためだけに捜索隊が結成された。
しかし旗が行方不明になったのは戦闘の最前線。軍旗捜索隊も敵の総攻撃にあい犬死にしてしまう。
困った参謀本部は軍隊の鼻つまみ集団ながら強運と実力で未だに一人の戦死者を出してない独立左文字小隊を召集するのだった……。
いやぁ、カッコいいね!佐藤允と中谷一郎、そして中丸忠雄!
あと結局美味しいとこを持ってっちゃうフランキー堺と堺左千夫! やっぱりこのW堺が本作のMVPでしょう。
実質の主演は左文字隊長扮する加山雄三だけど、こちらの面々の方が印象に残る。
とはいえ加山雄三もなかなかの好演で、岡本作品のようなシャープな作風にはこの人の個性はまさにピッタリだと思った。
でも凄いね。仲間が戦死して「いい奴だった」と泣いてる兵士に「月並みなことを言うな!あいつはおかしな奴だったよ。あっけなく死んじまいやがって(泣)」といい放つ佐藤允なんか。
この辺り、実際に戦闘体験のある岡本監督の率直な本音なのだろう。
ちなみに個人的には軍旗と言えば、水木しげる御大の『ダンピール海峡』という短編を思い出す。最後まで軍旗を守り抜き戦場の露と消えた一兵士の物語で、これは読んでいて衝撃的だった。
今からすればたかが軍旗ぐらいでなんだろうけど、当時としては人間の命より大事に大事にされていたのだろう。
この『独立愚連隊西へ』本編にも「人間の方は追加補充ができるからね」という怖い台詞があるし。
とはいえ、上司の体面を保つだけというクダラナイ理由でやらされる仕事は現代も沢山あるわけで、意外と人間の本質は戦前・戦後問わず変わってないのだろうという気もするがのぉ。
■映画 DATA==========================
監督:岡本喜八
脚本:岡本喜八/関沢新一
製作:田中友幸
音楽:佐藤勝
撮影:逢沢譲
公開:1960年10月30日(日)