菩薩

トイレの花子さんの菩薩のレビュー・感想・評価

トイレの花子さん(1995年製作の映画)
4.2
弱肉強食の原則を人間社会に当て嵌めそれを更に残酷な子供社会=小学校へと集約させる事により、より露悪的な人間性が浮き彫りになっていく…ってもうほぼトリアーとかハネケの系譜でめちゃくちゃ怖い。階級社会、大衆を翻弄し時には支配する為に用いられるデマ、排除されるマイノリティと完全に魔女狩りの映画。ヤギの生首なんてのは直接視覚的に恐怖だが、中盤から終盤にかけては更に精神的・聴覚的にも作用する恐怖で追い詰められる。和式で座る事すら許されないトイレの個室は完全な独房であるし、そこでの攻防戦が完全に『シャイニング』のアレ(縄跳びの使い方最高!)。絶対的な恐怖に立ち向かっていく少年はちゃんと馬乗りになり力で勝負を挑むのに、相対する変質者は彼の痛めた足首ばかりを集中的に狙ってくる。前田愛が廊下を疾走し墜落寸前の「花子さん」を食い止めるシークエンス、ちゃんとその直後に他の生徒が廊下を走り教師に「廊下を走ってはいけません!」と注意される、禁忌を犯してでも彼女を救ったこの一連の流れが「心に刻み込んだから!」の一言で感動的に回収される。悪霊では無く守護霊として描かれる新しき「花子さん」像、暗から明への変化を印象付ける灯火、彼女の声が共有され人々を学校へと向かわせるくだりなんてアクシズショックを思い出してしまう。ただこの作品がどの層をターゲットにしているかは最後まで分からなかった…し、ラストなんなんやアレ。なんか本当に丁寧に作られてて感動した。
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