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夜を賭けてのatomのレビュー・感想・評価

夜を賭けて(2002年製作の映画)
4.5
2002/12/01
渋谷シネアミューズにて

十二月初日の昼下がり、渋谷の街には氷雨がそぼ降っていたが、映画館を出たあたしには血湧き肉躍る興奮の余韻が残っていたので、傘もささずに駅までの道をまっしぐらにのしのし歩いたのであった。
どっからでもかこってこい!ってなもんであった。

   ☆
1958年、戦後の焼け跡が残る大阪。立入禁止の兵器工場跡に忍び込み、鉄屑を運び出して売り払うタフな連中が実在した…その名は「アパッチ」。(パンフレットより)

新宿梁山泊率いる金守珍(キムスジン)は、原作を読んですぐに、七年以上前から、この作品の映画化を思い立ったという。あまりにも大きなスケール(造幣廠の広大な土地と群像)なので、テント芝居では表現できない、これは映画でやるべきだと。

それにしても、映画の中で梁山泊の面々は躍動しているのだった。
終戦後の被差別地帯のバラック長屋の住人たちには、怨(オン)だの恨(ハン)だの言っている暇もないのだった。
終戦後の貧民地帯は、どうしたことか、破れかぶれの活気に満ちているのだった。
そこにあるのは鉄の塊を運ぶ「肉体」なのであったよ。
「肉体」が自分の生活を支えるとき、それは「誇り」そのものなのであったよ!
「肉体」が主役の映画に、舞台役者が張り切るのは当然のことであるよ。
状況劇場の唐十郎や李礼仙も当たり前のように出演しているし、大久保鷹ときたら映画の中でもナマ尻出し放題で嬉しげなのであった。

主演の山本太郎が良かった。走り、泳ぎ、潜り、殴りあう。日本にもいたのだなあ、こんな泥臭いワカモノが。感心した。

それから、ダーティーヒーロー役の山田純大というこれも若い役者の、目つきが良かった。
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