矢吹

A2の矢吹のレビュー・感想・評価

A2(2001年製作の映画)
3.9
居場所を守る。
住民もメディアもヤクザも警察も。
より己が生きやすくなるために
あれから四年。
この世の中にあるべき映像作品。

メディアとマスコミの頑張りの末に
ある地方では、オウムと住民の壁は無くなっている。
ある一方では、オウム排斥を求める人々。
彼らは、いま、ここ以外に行ってくれればオーケー。
という印象。これすらも切り取られたものに過ぎないけど、そこから思うに、
どこかに移ってくれって願いは
ならどこに行けばいいんだというオウムの状況と照らし合わせて、
もし、その移った先の人たちすらも鑑みてはいないのならば、という点では、
突き詰めると、命令されたらやりますってのと
あんま変わんないんじゃないのかな。
もちろん誰もが融和を求めた先にあるこの事態だろうし。
きっと世の中は大体誰かが何かを諦めることで回るし、諦められないから始まる。

彼らとて死ぬことは許されない。仲間内での自殺は止める。
来世来世と言いながら、
みんな、生きるためにやってることで。
今世をよく生きる、もしくはよく死ぬための来世という概念であって。
何かが必要で、
それは別に弱いとか強いとかじゃなくて、
生まれて生きて、あったかなかったか、
手に入れられたか。ないからこそ求めるでもあって。
マインドコントロールがあるとして、
考え方が変わるのは悪か、敗北か、わからん。
主語がでっかい作品だ。

メガネの女は頭がいまいちで嫌いだけど、
謝罪って誰のためにするのかって議論を迎えて
みんな宙吊りでやめられなくなってる。

何人集まったら?千人集まったら?
一人でも世論?

世間体か、怒りか、環境か、
なにに流されて生きるか。
それにしても
他人を平気で犠牲にできる上に成り立つ思想が
幅きかせられる世界ではない。
命じられたら殺しますは流石にどうかと思うんだけど。
映し出された、自分が生きるために他人を犠牲にできる精神は端々に転がってる。
そもそも誰をも正義としては描いてないっぽい。
とは言え、実際は多数が少数を蹂躙できるかのように見える世界で、
結局は、それを覆せるだけの逃げ道としての説得力がそこにはかけていたんだろうな。
瀬戸内寂聴とケミオを見習ってほしい。

人はそういうよねって。
我々が生きてるのは現世ではないって。
流転の先を見てるんだって。
性欲が一番辛いんだって。
言うけれど、果たして、他の人はみんな現世に生きてるんだろうか。
自分たち以外を現世と定義するだけ。
おれにはわからんし、お前のこともわからん
欲の仕分け。
宗教への執着。

真理なんてこの世にあるかは知らんが、
事実としてあったことはあって。
ワンで示されたのは、丁寧な彼らの破綻と立場であって。ここからが本番だ。

自己都合ありきで、誰かのせいにしてたり。
それ自体が自分の判断だと言われたらそれはそれだよ。
みんなが平等に何かを得るんじゃなくて
みんなが平等に何かを諦めることが
平和。

やはり現実が一番面白いのかもしれない。
エンドもスタートもないじゃん。
ハッピーもバッドもないじゃん。
主役がいないんだからさ。
誰かにとって、は無限にある世界で。
誰かを撮って、その中の一人にカメラを向ける。
そして、撮影者としての自分自身。
撮る責任と見る責任。
おれはそれでなにか解決したとは思わないという森達也。

あいかわらずドキュメンタリーのレビューはろくなことにならない。
矢吹

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