8bit

アレックスの8bitのレビュー・感想・評価

アレックス(2002年製作の映画)
4.0
原題〝Irréversible〟は「取り返しのつかない」という意味。

まさに映画だからこそできた表現といえるのではないか。
エンドクレジット~ラストシーンから始まり、時間軸を遡るようにシーンの順番が逆に配置されている構成。
深紅に染まった映像が少しずつ色づいてゆくグラデーション。
テーマは時間の不可逆性だろうか。失った時間は取り戻せない。
「時間が解決してくれる」なんてそんなものは綺麗ごとだ言わんばかりに容赦のない悲劇と復讐が描かれ、
残された言葉は「時がすべてを破壊する」。

ストーリー上はクライマックスにあたる、ゲイクラブへの殴り込みから不快感MAX。
どぎつい深紅の映像と、画面酔いしそうなカメラワーク、ひっきりなしに流れる不穏なノイズ。
映り込む男同士の交わり…。
やがて繰り広げられる凄惨な暴力。
腕をへし折られたり、消火器で顔面をぐちゃぐちゃにする様子がワンカットで描かれるシーンはどんなスプラッタ映画よりも生々しくて鮮烈な印象。
これはいったい何なのか。

シーンが進むにつれ私たちには解ってくる。
マルキュスとピエール、そしてアレックスの関係を。
その夜に何が起きたのかを。
そして、いくつもの取り返しのつかない事実を。
一部始終をノーカットで描かれるモニカ・ベルッチのレイプシーンには度肝を抜かれた。

ラストシーン(ストーリー上はオープニング)で全裸で語り合う二人はあまりにも美しいが、
すべてが破壊されてしまう未来を知っている私たちには交わされる言葉や仕草のひとつひとつが、とてつもなく哀しく映ってしまう。
もう二度と戻ることのない幸福な時間…。

まさかのノーモザイク、ノーボカシ。
画面に登場するあらゆるチ〇コすべてが目視可能。
いまやモザイク・ボカシ大国となってしまった現在の日本じゃもうあり得ない。
まさに「時がすべてを破壊する」…。
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