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山桜のぉゅのレビュー・感想・評価

山桜(2008年製作の映画)
3.7
2021年 鑑賞 21-256-15
原作は藤沢周平先生の短編小説。「月とキャベツ」「地下鉄に乗って」「小川の辺」「花戦さ」等の、篠原哲雄監督の時代劇作品。

海坂藩の下級武士の娘・野江(田中麗奈さん)は、前の夫に病気で先立たれ、磯村庄左衛門(千葉哲也さん)と再婚していた。叔母の墓参りの帰りに、磯村との縁談がある以前に縁談の申込があった、剣術の名手の手塚弥一郎(東山紀之さん)と偶然出会う。山桜が満開のころであった。野江が手塚からの縁談を断ったのは、剣術の名手は怖い人、という先入観を持っていたからであった。しかし、実際に話をしてみると手塚は、野江が思っていたのとはまるで正反対の心の優しい男であると分かり、その時から野江は手塚のことを意識するようになった。婚家の日夜は幸せではない。
そのころ、凶作が続き藩の財政があやういときに乗じて、重臣諏訪平右衛門(村井国夫さん)は私腹を肥やしており...

藤沢周平先生の小説の映画化作品といえば、「たそがれ清平衛」「隠し剣 鬼の爪」がついつい思い出してしまう。好き過ぎる故、ハードルが高くなってしまうので、今回はフラットな状態で、過度な期待はせずに鑑賞したい。

冒頭の映像からグッと持って行かれる!自然・風景の綺麗なこと!穏やかな空気の流れ、野江の表情や話し方、桜のカットで、一気に引き込まれる。

嫁ぎ先・磯村家の両親(義父左次衛門(高橋長英さん)もだが、義母富代(永島暎子さん)は特に)怖わっ!てか、夫磯村庄左衛門の当たりも強っ!

農作業中の野江の表情は、“幸せそうな顔” そのものだった。そりゃね、土を耕していたら... だもんな。だが...

野江と農作業をしていた吾助(綱島郷太郎さん)の背中が... あの名前の書いた木の棒も相まって胸が苦しくなる。

“わかっておいでだろうね 自分がしたことがどういうことか お前の居場所はないよ”
ついに手塚弥一郎の、諏訪への謀反が起こった海坂藩。野江も夫との関係から磯村家を追い出され...

春夏秋冬の自然と共に流れていく、海坂藩と、野江と手塚の運命が移ろいゆく様が、丁寧に描かれた作品。篠原監督は凄いなぁと、改めて実感!個人的には、野江の母・浦井瑞江(檀ふみさん)がいいっ!野江の想いや考えを見透かし、母なりの目線で野江を見守り、支え、包み込み、導くというサポートは、グッとくるところがある。「あなたが次に家を出る時は...」や、「手塚様のお母様はきっと...」の言葉は特に刺さった。そして(母の思った通り)、手塚家に赴く野江...

“あなたはほんの少し回り道をされているだけなのです”
一年後の春の田園風景。野江と手塚の母志津(富司純子さん)と、あの満開の桜は、あの人をずっと待っていた...

一昔前、純愛、純愛言っていたが、そこに野江の叔母と、少し回り道をした野江も加えるべき案件ですな... えっ?古い?
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