荒野の狼

デスプルーフ in グラインドハウスの荒野の狼のレビュー・感想・評価

4.0
映画の前半は本筋に関連のない女の子の下ネタの会話が延々と続き、その娘たちが血まみれになって、足が千切れたりして死んでいきます。陰惨かつ展開がスローで、唯一の救いはカート・ラッセル演じる元スタントマンのストーカー殺人鬼の不気味な迫力です。後半は、一転コミカルになり、ストーカーまで明るくなるのですが、前半の暗い印象を引きずってしまう人が多いかと思います。この映画に限り、前半を早送りして、後半から見るのもありかなと思われます。子供やデートなどにはまったく薦められない映画です(ヌードシーンは皆無ですが)。
ただ、この映画を薦める理由は後半の主役のゾーイ・ベルの紹介ということです。メイキングで監督が語っているのは、この映画はベルのために作ったとのことです。ベルは“キル・ビル”の他、アメリカの人気テレビドラマのジーナ(Xena)のスタントもしています。この映画ではベルは本人役で出演しています。スタント以外の演技経験がほとんどなく、会話のシーンは苦手とのことですが、本人の人の良さがにじみでています。特別、筋肉を誇示したりすることはないのですが、全身から溢れる力強さは圧倒的で、肉体から発散される本物の凄みが感じられます。身体が大きいとかいうわけではないのに、格闘家が客演した時のような迫力です。メイキングでは、全て自分でスタントをこなすので、スチーブ・マックイーンのようであると評されていました。これまでに志穂美悦子など、アクションのできる女優はいましたが、そのどのタイプとも違います。スタントも確かに凄いのですが、それ以上にベルの存在感ゆえに意味のある映画といえます。監督はベルは、女の子の憧れの的になるのではと予想していますが、男女や年齢に関係なく、彼女のファンが増えることが予見できます。CGに頼らない、本物のアクションのできる、今までに一度も見たことのない女優に会えます。
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