タケオ

バッド・テイストのタケオのレビュー・感想・評価

バッド・テイスト(1987年製作の映画)
3.8
 『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(01〜03年)や『キング・コング』(05年)などの作品で知られるピーター・ジャクソンの長編デビュー作。ピーター・ジャクソンはニュージーランドの日刊紙「イブニング・ポスト紙」で写真技師者として働く傍ら、87年に映画制作会社「ウイングナット・フィルム」を設立。仲間とともに少ない給料でやりくりしながら、週末に空き時間を見つけては撮影と編集をコツコツと行い、約4年半という歳月をかけて完成させた力作である。約15万ドルという超低予算で制作された本作だが、カンヌ国際映画祭で上映されるや否や各方面で話題を呼び、ピーター・ジャクソンはカルト監督として世界中にその名を知らしめた。
 ニュージーランドのど田舎を舞台に、人間を誘拐しにきたエイリアンと特殊部隊の4人が死闘を繰り広げるというシンプル極まりないプロットではあるが、それゆえに独創的かつ悪趣味(バッドテイスト)なアイデアが光っている。極まりすぎてギャグの領域にまで到達した残虐描写など、サム・ライミの監督デビュー作『死霊のはらわた』(81年)とも通底する圧倒的なパワーが本作にはある。どちらも「視覚的快楽」に満ちた作品だ。強いて言えば、残虐描写のタイプがやや異なる。『死霊のはらわた』の残虐描写はどちらかといえばカラッとした印象を残すが、『バッドテイスト』の残酷描写はとにかく全編グチョグチョとしている。というのも本作に登場するエイリアンたちの目的は、誘拐した人間たちを宇宙のファスト・フード店の'パテ'にすることだからだ。邪悪なエイリアンからしてみれば、人間なんて所詮ただの肉なのである。
 ブシャブシャと血飛沫が飛び散り、グチョグチョとした内臓がぶちまけられ、そしてゴロゴロと死体が転がるような、とにかくご機嫌な作品である。『ミート・ザ・フィーブル 怒りのヒポポタマス』(89年)に『ブレインデッド』(92年)と、ピーター・ジャクソンは本作以降もしばらくインモラルでグチョグチョとした作品を制作し続けていくわけだが、本作は正にその原点ともいえる作品である。今なおピーター・ジャクソンが才能溢れる監督であることに異論はないが、やはり最近はお行儀が良すぎる気がしなくもない。ビッグバジェット・ムービーも大いに結構だが、低予算でもいいので是非ともピーター・ジャクソンには再び本作のような「トンデモない作品」を制作してほしいものである。
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