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ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探してのRのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

2010年のアメリカの作品。

監督は「プラダを着た悪魔」のデヴィッド・フランケル。

あらすじ

一年のうちに北陸大陸で見つけた野鳥の種類を競う大会「ザ・ビッグイヤー」愛鳥家たちにとって憧れのこの大会に年齢も立場も違う3人の男たちが夢と現実の狭間で葛藤しながらも野鳥を探し求めて奔走する様を描く。

ディズニープラスにてラインナップをディグってたら、なんかめちゃくちゃ面白そうな作品あんじゃん!ということで鑑賞。

結論から言えば、予想通りめっちゃ面白かったです🐤

で、お話で出てくる「(ザ・)ビッグイヤー」とはアメリカ野鳥協会が実際に主催している大会で(多分)1969年という古くから行われており、日本でも愛知県などで行われていたこともある愛鳥家なら一度は参加してみたい憧れの大会ということらしい、へー。

お話はあらすじの通り、一種群像劇的な形で3人の男たちが「ビッグイヤー」に挑む姿を描いている。

で、その3人の男たちってのがジャック・ブラック(「アポロ10号1/2:宇宙時代のアドベンチャー」)、オーウェン・ウィルソン(「マリー・ミー」)、そしてスティーヴ・マーティン(「ロビン・ウィリアムズ えがおの裏側」)といったどちらかと言えばコメディ映画畑の俳優陣たち。

ということで空気感がやっぱほっこりする。野鳥一羽のためにわれ先にといい歳の大人たちがあっちだこっちだと駆け出す様は観ていて楽しいし、そのために微妙な心理戦を繰り広げたり、大人気なーいマウントの取り合いをしているのは観ていて面白い。

掛け合いの妙もコメディ俳優ならではのテンポで相性も抜群。

また、今作それぞれの人間ドラマ描写も魅力的。このビッグイヤー、一年にも長きに渡る戦いということで、しかも範囲は北陸大陸全域。だからこそ、あっこの場所になんたらっていうレアな鳥が出たという情報が出たら、他の何人いるかわからない競争相手よりも一羽でも多く見るためにわざわざ出かけなければならないというわけでとにかく交通費が膨大にかかるってわけ。

で、今作の語り手であり、主人公の1人でもあるジャック・ブラック演じるブラッドは仕事こそあるものの実家暮らしでとにかく金がない、というわけで30オーバーの立派なおじさんながら、老齢の両親に金の無心をしなければならない状況…わざわざ鳥のために世知辛い笑。

逆に自身で会社を立ち上げたやり手の社長でもあるスティーヴ・マーティン演じるステューはお金も充分にあって早々にキャリアをリタイアして隠居暮らし、その矢先に取り組むビッグイヤーと順風満帆な大人趣味志向ながら、会社に残した役員たちは彼を放っておかず、ビッグイヤー挑戦中でもお構いなしにヘルプで呼び出される始末。

また、息子夫婦に生まれた初孫の顔を見て、ビッグイヤーに挑戦している自分自身を俯瞰してしまい、ストイックに取り組めなくなる場面も。

また、前年度のチャンピオンであり、今年度も優勝筆頭候補のオーウェン・ウィルソン演じるケニー(ちなみに彼は実在の人物)は誰よりも上手く立ち回り、時に狡賢く競争相手を騙したり、蹴落としたりするものの、ストイックに取り組むことで、奥さんのジェシカ(ロザムンド・パイク「パーフェクト・ケア」)との間にすれ違いが生じてしまうなど、三者三様それぞれの悩みがあったりするところが見どころ。

また、それに伴い、鳥の生態系と彼らの生活描写をオーバーラップさせたシーンもちらほらあって、例えばステューが会社の商談のために急遽ヘリで呼び出される道中見かけたアメリカオオモズっていう鳥の写真を役員たちに見せて、綺麗な声で相手を誘き寄せて枝に突き刺すんだよと講釈を垂れた後、嫌味を言う商談相手に三行半を突きつけて、まるでそのオオモズのように決定打をかますシーンだったり、ハクトウワシの求愛のシーンを見かけた3人のうち、家庭があるステューとケニーは家に残した家族たちに思いを馳せるのに対して独り身のブラッドだけが孤独を感じるシーンがあったり…鳥たちの生態系のように同じ地球に生きる人間たちにもそれぞれドラマがあるんだなぁと興味深くも実感させられるw

その中で一番印象的なのはそれまで鳥に興味もなかったブラッドの父親(ブライアン・デネヒー「マスター・マギー」)がステューの説得により、思い直して、心臓に病を抱えながらも出かけた森であわや死んじゃうフラグか?と思わせといての見つけたフクロウを2人で眺める=疎遠だった父親との関係性の修復のシーンはちょっとグッときてしまった🥲

そうそう、鳥と言えば、ヒッチコックの「鳥」オマージュもコメディ演出としてあったのも面白かったなぁ。

で、それぞれの人間ドラマのおかしみもありつつ、終盤にいくにつれて、やはり「誰が今年のビッグイヤーを制するのか?」という点に焦点が絞られるわけなんだけど、優勝出来なかった代わりにコツコツと取り組みつつも、愛する家族と過ごす時間を選んだステューや同じビッグイヤーに取り組むジェシカ(ラシダ・ジョーンズ「オン・ザ・ロック」)と途中彼氏ができちゃうなどのピンチもありながら、関係性を築き、遂に付き合うことになったブラッドに対して、優勝こそできたものの名誉を選択したことで結局ジェシカと別れることになってしまったケニーという対図はやはり現実は熾烈な競争社会、何かを得るためには何かを犠牲にしなくてはならないという、ちょっぴりほろ苦い結末で単純なハッピーエンドで終わらせないところも秀逸。

他にもアカゲラはアメリカ北西部ではユニコーンを見るくらい希少といった豆知識が入ったり、何よりエンドロール、多分実際に撮られたであろう無数の鳥たちの写真を眺めるとそれまで鳥なんかには全然興味がなかった俺でも、ちょっと空を眺めてどんな鳥が生息しているのか調べたくなっちゃうから映画の影響力って凄まじい。

鳥好きならもちろんのこと、ちょっと珍しいタイプのスポーツ映画として観ても面白く感じる隠れた小品という感じですまだ観てない方にもオススメです👍

絶景の島でバードウォッチングに精を出すシーンで流れるColdplayの「Viva la Vida」も作品にあってて非常に良かったなぁ!!
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