Yoshishun

男たちの挽歌Ⅲ アゲイン/明日への誓いのYoshishunのレビュー・感想・評価

3.7
“女の挽歌”

時系列としては1作目より前の物語となる、『男たちの挽歌』シリーズ完結編。ジョン・ウーからツイ・ハークに監督交代されており、男たちの熱き友情や裏切りの要素は薄れ、逆にメロドラマ要素が追加された作品となっている。これが功を奏しているかは別として、前作までとは全く異なる、新しい『男たちの挽歌』といえる。

始まって早々、戦時中のベトナムを舞台に税関に検問されているマークが映し出される。本作のマークは、まだマフィアに入る前で、かつホーとも出会っていない頃。それ故に1作目の強者感はなく、銃器もマトモに扱ったことがない。演じるチョウ・ユンファも1作目より以前の物語であることを念頭に演技しており、どこか初々しさを感じさせる。そんな彼の前に現れたのが、キットという謎多き女。マークはマンという従兄弟と共にキットに惚れるが、当の本人はマーク一筋。それに気付かないマークは、マンとキットの仲を取り持つために自ら手を引くことに。こうして奇妙な三角関係が形成されていくのだが、彼等を狙うベトナム軍の魔の手が忍び寄る。

断っておくと、本作で登場するキット、そしてホーは前作までに登場したキャラクターとは全くの別人だ。余程愛情があったのか同名のキャラクターを登場させたのだろうが、ジョン・ウー版へのリスペクトかは置いといて、特にホーの設定には戸惑ってしまうこと請け合いだ。しかし、前作までの同名のキャラクターの関係性、特にホーとキットの恋人のような関係はある意味受け継がれているように思う。

キットを中心にしたメロドラマが長々と展開されるため、これが『男たちの挽歌』という冠を背負えているのかは疑問だが、むしろ『女の挽歌』が正しいように思う。マークが何故あんなに銃火器を扱えるようになったなもキットが関係しているし、とにかくチョウ・ユンファよりもアニタ・ムイが目立っていた。あのベトナムでの悲劇を乗り越えて、1作目の義理堅く熱いマークが誕生したのかと思えば、案外シリーズの繋ぎとしては然程悪くない。勿論ジョン・ウーによる1,2作目が好き過ぎるだけに肩透かし感は否めないものの、ツイ・ハーク流にシリーズに新風を吹き込んだのだ。
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