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汽車はふたたび故郷へのSariのレビュー・感想・評価

汽車はふたたび故郷へ(2010年製作の映画)
3.7
グルジア出身の名匠オタール・イオセリアーニ監督の自伝的な要素が含まれた、一人の映画作家の青春の物語。

旧ソ連時代のグルジア。映画監督のニコは新作を撮影中だが、スケジュール通り進んでいないことを撮影所長から叱責され、検閲官からは「国家のカネで好き勝手に作っている」と批判される。その上、逮捕され、暴行まで受けたニコは、自由を求めてフランスへ出国、新たな映画作りに取り組むが…。

辛い現実を、あくまでも軽妙にユーモアを交えて描くイオセリアーニ・タッチは今回も健在である。その一方、フランスで自由を手にしたはずのニコが、今度は別の困難、自由社会の不自由に直面するくだりには、クールな観察眼が光る。瓢々とした身のこなしと、強靭な精神が同居する。

主演ダト・タリエラシュヴィリは、イオセリアーニ監督の孫にあたるそうだ。フランスの映画会社に務める老齢のピエール・エテックスや俳優ビュル・オジエなど、脇を固めるフランス映画人の存在も魅力である。

2024/05/01 DVD
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