Shu

クローンは故郷をめざすのShuのレビュー・感想・評価

クローンは故郷をめざす(2008年製作の映画)
4.0
「クローンは故郷をめざす」をシネカノン有楽町1丁目劇場に観にいった。
この作品は2006年サンダンス・NHK国際映像作家賞を受賞した中嶋莞爾監督自身の脚本で同賞の審査員だったビム・ベンダースが脚本に惚れ込みエグゼクティブ・プロデューサーをかって出たらしい。

お話は…
地球の衛星軌道上で殉職した宇宙飛行士、高原耕平は合法的クローンとして蘇る。身体的には完璧だったが技術的なミスで少年時代までの記憶しかない。子供の頃に自分を助けようとして川で溺れ死んだ双子の弟の記憶。
再生後、自らの遺体と対面した耕平は、遺体を弟と思い込み、母に届けるべく、故郷へ歩き始める。
こんな幻想的かつ日本的なSFは今までなかったんじゃないかな。
とてもユニークなアプローチだと思う。
クローンを通して命の尊厳とは何かを深く考えさせられた。
それだけではなく親子の絆、母への思いなど染みたなぁ。
そしてSFに日本独特のスピリチュアルな生死観を漂わせるところなんて実に新鮮だった。
何しろ作品全体を包む映像の美しさに惹きこまれる。ロケハンをすべて自分でやったことだけはある。
色彩のトーンが抑えられていてフィルムでの撮影による監督の映像へのこだわりが伝わる。
主人公の高原耕平役に今作品が初めての主演映画というミッチーこと及川光博。
あと殉職してクローンで蘇った夫を迎える妻役の永作博美が上手い。
複雑な心理の妻役を実にうまく演じていた。
日本映画とSFが一番しっくりくる作品なんじゃないかなと思う。
ただ昔のロシア映画(タルコフスキーとか)を彷彿させる空気感なのでお疲れの時にはススメません。
体調がよくて時間のある方はぜひ。

(2009年01月26日レビュー転載)
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