たかだんごむし

アウトローのたかだんごむしのレビュー・感想・評価

アウトロー(1976年製作の映画)
3.3
西部劇とアメリカ南北戦争について精通してればもっと楽しめたかもしれない。最後の酒場の場面、ゲリラを裏切ったボスと主人公の再会は、主人公が彼に背中を見せた時点で、お互いの内心の共有が出来ているのが伝わってくる。ボスは先に撃つ権利を与えるとは言っているが、どちらにしても、本当の敵は人間というよりこの戦争そのものだ、と理解し合ってるのがわかり、2人は離れていく。クリントイーストウッドの西部劇の世界観は美しさと締まりがあって好き。無法者のお尋ね者が、人が苦しんでるのをほっとけない性分で、きったない唾を吐く度に仲間が増えていくストーリーが面白い。主人公を囲む連れ達は、主人公と同様に、悲運を背負ってきたいわば復讐者であるから強い。一人で何人相手に銃撃戦やってんだよ、って状況でも勝ち続ける彼はある意味、この南北戦争時代の理不尽な殺戮を受けた人々の復讐心の具現化という風に捉えてもいいのかもしれない。目的は飽くまで北軍に対する復讐であるから、彼は酒にもあらゆる欲にも目をくれず、自分に付いてくる仲間たちも見ていない。人間性はアンリアルと言えばそれまでだが、そこに違和感やつまらなさを感じさせず、むしろ見るものを引き付ける魅力を感じさせてくれるのは、イーストウッドの持ち前の俳優力と演出によるもの。ラストの太陽をバックにした画で終わる瞬間、これは男の映画だなーって感想が出るくらい、このヒーローはめちゃめちゃカッコいい。