アー君

恐怖の足跡のアー君のレビュー・感想・評価

恐怖の足跡(1962年製作の映画)
3.5
運良く事故で生き残った女性が、その後の幻覚に惑わせられるだけの話ではあるが、全体的な構成は荒削りなところは否めないが、上映時間は70分ほどの短いながらも見せ場は要所要所は押さえており、鑑賞後はジャンル的にはミステリーやホラーとも言い難い中間的な立ち位置の噂通りのカルトムービーであった。

確かに演出はリンチの「マルホランド・ドライブ」を連想させるし、進行はシャマランぽい感じもあり、現在活躍している作家には影響はあったのだろう。(また水木しげるの短編にもありそうな雰囲気でもあった。)

最初のシーンをみると、主人公はゲームを誘ったナンパ男性達なのかなと思わせるが、その後の小展開で女性にシフトするあたりは、ヒッチコック「サイコ」のような演出でそれなりに凝った演出である。

ドライブインシアター全盛期で製作予算は自主制作に近く極力抑えてはいるようだが、事故の場面は当時としては大胆で見どころはあった。また彼女から見える妖夢のような映像世界はあの世へ導かれる現実からの妄想だったのかは解釈が曖昧であるが、執拗に交際を迫る男性から突然と鏡に写る亡霊をフロイト的な精神分析的な解釈で捉えれば、車やオルガンが性の代償行為であり、自我における無意識下の防衛であれば学術的に深みもあり、そこがこの映画の魅力ではないだろうか。
アー君

アー君