日中戦争直前、1936-37の上海租界。それぞれ大事な人を失った過去を持つロシアの伯爵夫人とアメリカの元外交官の恋愛。カズオ・イシグロのオリジナル脚本とのことで興味を持ったのだが、難解さは一切なく、超正統派のメロドラマだった。
当時の上海には、清の敗戦(阿片戦争、日清戦争)の結果として、英米仏と日本の租界が設けられていた。
租界はほぼ独立国であり、かつ貿易拠点であったことから、多国籍の人々や文化が入り乱れ繁栄していたという。とはいえ、所詮は借り物の土地であり、その繁栄も刹那的なもの。
元外交官ジャクソンのBARは、この都市の繁栄の象徴として描かれていた。それも相当の尺をとって丁寧に。この映画の主役は魔都上海なのかもしれない。