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孫文の義士団のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

孫文の義士団(2009年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

清朝末期の香港。そこに孫文が来航するという極秘情報が流れる。腐敗した王朝打倒を掲げる革命家である彼の目的は、武装蜂起のための同志との密談。そして、西太后が仕向ける暗殺団に対して、孫文を護衛する義士団が結成される。ある者は愛する人のために、ある者は己の信念のために、国の未来を賭けた戦いが始まる…。

辛亥革命に繋がる、孫文と同志たちとの会談を成功させようと奮闘する香港市民の姿を描いた史劇エンターテイメント。
革命派の義士たちは、孫文の会談中、暗殺団から彼を守るために影武者をたて、1時間だけ時間を稼ぐ作戦を立てる。
俺に任せて先に行けぇ!とばかりに、自分の死と引き換えに大事な人を助ける自己犠牲の精神が熱い秀作。

前半はキャラクター紹介がメイン。
各々の人物の背景をじっくりと描き、志から想いや因縁までたっぷりと時間を掛ける。
それが少々長いのが残念だが、「これが終わったら結婚しよう」とか、「この恩に生命を持って答えよう」、「僕も役に立ちたい」、「やってくれたら、あの子に本当の父の名を教えるわ」と、充分な死亡フラグを立てまくる前振り。

それぞれの志を胸に仲間が集まる展開がまるで「七人の侍」のようだが、義士団として立ち上がるのは戦いに不慣れな無名の労働者ばかりで、果たしてまとまるのか、暗殺者に立ち向かえるのかすら不安。

一方で、義士団に手を貸すのは、禁断の恋をしてしまい、その自責の念から路上生活を送る貴族や、博打に狂って妻と娘に逃げられるどうしようもない警官など、今ひとつ頼りない放蕩者ばかり。
それに比べて敵はボウガンや強力な酸、爆薬などで武装した何百もの暗殺者。
誰がどう見ても勝ち目などない戦いだ。

しかし時が迫り、各々の想いが、中国への「変わって欲しい」と集い始める件りから、映画の色が変わり、非常に緊張感が上がる。

オープンセットで再現された清朝末期の香港を舞台に、ドニー・イェン、レオン・ライら、中国系豪華スター陣がノンストップ・アクションを繰り広げる。

身代わりによる時間稼ぎという地味な作戦が一転、壮絶な決死戦に。
後半はもう中国武侠の真骨頂。
アクロバティックな闘いと死の美学がこれでもかと繰り広げられる。
革命という大義のため、名もなき人々が命を懸ける姿が熱く、涙腺が震える。

その熱い戦いに、「何で一般人がそんなに強いんだ?」とツッコミを入れるのは、もう野暮というもの。

歴史の影に存在した「名もなき者たち」の活躍に焦点を当てた物語は、庶民として大いに共感できる作り。
だが、最も悲しく残念なのは、辛亥革命を成功に導いたこの有志たちの思いは、今の共和制の中国には全く影を残していないことだろう。
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