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孫文の義士団のmagic227のネタバレレビュー・内容・結末

孫文の義士団(2009年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

男の死に様で涙を誘うのは昔はフランス映画と決まっていました。何と言ってもアラン・ドロンとジャン・ポール・ベルモンドという、死に様のカッコ良さでは1〜2を争う名優二人を擁していたのですから。しかし今、最もカッコ良い死に様を見せてくれるのは間違いなく香港映画です。ジョニー・トーに代表される香港ノワールや、昔から蓮面と続く武侠映画は、今や世界中の男たちから大量の涙を搾り取っています。そして本作もまた男の死に様をこれでもかと見せてくれる映画なのです。ただ一つだけ違うのは、この映画の登場人物は、剣客でも、武術の達人でも無い、ただの名も無き人々だということでしょう。 舞台は20世紀初頭、辛亥革命に向けた最後の会談のために香港を訪れた孫文を巡り、彼を殺害せんとする清朝の暗殺団500人と、それを阻止すべく立ち上がった名もなき8人の義士。「映画史上最も過酷な1時間」というキャッチコピー通り、会談にかかるわずか1時間を守り切るために義士たちは命を掛けて闘い、倒れて行きます。この1時間がほぼリアルタイムで進行するので観客はぎりぎりの切迫感を義士たちと同じように感じる事になるのです。とにかく138分の中で、これだけ大勢の登場人物を過不足なく描き分け、尚且つ様々に埋め込まれた仕掛けと伏線を活かしながら、クライマックスまで観客を引っ張って行く脚本は見事の一言。そして、ラストシーンは階段に人力車。デ・パルマの「アンタッチャブル」でも同様のシーンがありましたが、これは勿論「戦艦ポチョムキン」“オデッサの階段”へのオマージュでしょう。アクションに特化したように見えて実は本作はかなり技巧的な作品でもあり、メインのアクションが始まるまでの間に織り込まれた様々なドラマこそが義士たちの魅力を際立たせているのです。そういう意味では男性は勿論ですが、女性でも充分に楽しめる作品と言えるでしょう。
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