このレビューはネタバレを含みます
1800年代末から1900年代初頭の中華圏って武闘派が犇き合い過ぎじゃない? ドラゴボよりインフレしてない? それでよくない?
そんでファン・ビンビンって感性にビンビンくる美人よね。
◆1906年、イギリス占領下にある香港。革命派と清朝攘夷派が睨み合う中、革命家の孫文が香港に帰国する。革命派は孫文の護衛作戦を行い、辛亥革命の足掛かりを作ろうとする。
序盤、革命派のアジトに大量の清朝派の暗殺者が大量に押し入る乱戦。「仕込みバールのようなもの」格好いいけど、凶悪。シン・ユーも登場し、悪役感は最高潮に。
リー・ユータン(ワン・シュエチー)とチェン・シャオバイ(レオン・カーフェイ)が中心となり、革命派が動き出す。
一方その頃、シェン・チョンヤン(ドニー・イェン)は日銭を稼ぎ、博打に興じている。
リー・ユータンがめちゃくちゃいいお父さんでもあり、旦那様である。義士団に飯を振る舞ったり、アスー〈ダン・スーダイ〉(ニコラス・ツェー)の婚姻の仲立ちしたり。
シャオバイが清朝派のボス、イエン・シャオグオ(フー・ジュン)に捕まり、師弟関係があったり、腹を切りながら逃走したり。
アスーが完全に死亡フラグを立てたり、仲間たちと交流を立てたり、時代背景をじっくりと説明し、前半をドラマ仕立てに終える。
物語がパイロンをぐるりと周り折り返した頃にドニー・イェンの暴力が始まる。
ここまでが歴史ドラマものとして十分に面白かったのだけれど、これ以降がもう得も言われぬ興奮の一人坩堝。なんだか全員死ぬ感しかない訳で、まぁ死ぬ訳で。ただそれぞれが戦う姿をドラマチックに描き過ぎていて、心が苦しくなる。
孫文を護衛しながらの防衛戦がすごい。清朝派の襲撃から迫力が尋常じゃないし、それに立ち向かう革命派の気概が満ち満ちている。
ワン・フーミン臭豆腐(メンケ・バータル)の見せ場がいい。滅多刺しの中戦うのタフ過ぎて少し笑ってしまったけれど、仲間のために、少林寺の僧侶としての矜持に立ち上がる姿は震える。何よりバスケ選手として有効に描かれている。窓から孫文を狙う狙撃手をダンク・シュートで倒すのは爽快。
ファン・ホン(クリス・リー)も鎖鏢のような武器でのアクションがいい。孫文を爆殺しようとする清朝派から身を挺し、爆発に巻き込まれる。「親不幸をお許しください」を死に際に言うのはよくない。切な過ぎる。
警察の登場シーンもグッド。勝手にこの時代周辺の警察はイギリス駐在員に賄賂渡してヘコヘコしてるイメージだったからか、硬派な活躍が見れただけでとんでもなく好印象。
ドニー・イェンvsカン・リー。
これまで裏方に徹してきたチョンヤンが遂に活躍をする。
チェンシャン(カン・リー)が人混みを掻き分けるどころか弾け飛ばしながらの登場は、派手過ぎて笑ってしまう。バキバキの肉弾戦に、ワイアー・アクションも盛り沢山。机から何から凡ゆるものぶち壊しながら戦うの爽快。パワーvsスピードの構図本当に好き。
革命のためならばと、孫文の影武者になるユータンの息子チョングワン(ワン・ポーチエ)。アスーの葛藤とチョングワンの決意が心を揺さぶる。
後に父親にバレる訳だけれど、パパの心境を思えば胃にドデカイ穴が何個も空いてそう。
チョングワンの乗った人力車を追う清朝派の暗殺者たちの前に、リウ・ユーバイ(レオン・ライ)が鉄扇得物に登場するのが本当に格好いい。張飛か弁慶かと思うくらいに行手を阻む。鉄扇から舞空術から棒術まで見放題。身体中をズタズタにされながら奮闘するも、シャオグオに倒されてしまう。
ズタボロのチョンヤンがシャオグオの駆る馬に捨て身タックル。自身と嫁、子供の幻想を見てしまったり、子供に誇れる父親であろうとしての行動はぐっと心を掴まれるが、あまりにも弾け飛ぶものだから笑ってしまった。
人力車に影武者のチョングワンを乗せ、逃げ続けたが、遂にシャオグオに追い詰められてしまう。アスーが必死にシャオグオの足に縋りつきながらも、なす術なく縊り殺される。チョングワンを守るために取る行動の裏に見える友情が熱い。
シャオバイはシャオグオに、人力車に乗っているのは影武者であると告げるも、それを意に介さずシャオグオはチョングアンを刺殺する。シャオバイがシャオグオを小銃で撃つと、「教え子は国の恩に報いました」と言い息絶える。ユータンは息子の亡骸を抱きしめ慟哭を上げる。
ここの一連がめちゃくちゃ哀愁ある。互いの「子」が、それぞれが信念に則った行動の末に生き絶える。
そして1911年に辛亥革命が完成し終幕。
これ、めちゃくちゃ面白い。とんでもない歴史モノ。ドラマ性とアクション性がバチバチに混ざり合って、すごい映画になってる。アマルガムなんてもんじゃなく、ガンダリウム合金だわ。ふ