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007は二度死ぬのオーウェンのレビュー・感想・評価

007は二度死ぬ(1967年製作の映画)
3.0
この"007シリーズ"5作目の映画「007は二度死ぬ」は、原題が「You only live twice」と言って、イアン・フレミングの原作で、主人公のジェームズ・ボンドが松尾芭蕉の俳句に因んで詠んだ短い詩が元になっています。

意味は「人生を実感できるのは二度だけ。生まれたときと死ぬときと」。
元々の松尾芭蕉の句は、「命二つ生きたる桜かな」。

死と美学が隣り合わせにある日本人の死生観にイアン・フレミングは感銘を受けたと言われています。
ついでながら、酒と忍者とトルコ風呂にも(笑)。

この映画は、製作準備中に主要スタッフが2度も航空機事故に遭遇するなど、不吉な幕開けとなったことでも有名ですね。

国辱だとか、トンデモ映画という文脈で語られることが多い映画ですが、007スタッフは日本人に畏敬の眼差しを持ち、異文化に対して真摯に取り組んでいると思う。

丹波哲郎扮するタイガー田中の基地が丸の内線の中野新橋駅だろうと、相撲部屋の外が国技館だろうと、東京から神戸まで車で20分ぐらいだろうと、姫路城に忍者がいようと、瀬戸内海に阿蘇山があろうと、細かいことはどうでもいいのだ。

偽装したカルデラ湖の裏側に巨大な火山型ロケット発射基地がドーンとあり、どうだ、これが007だ!!という大迫力の前には小ネタの笑いなど吹っ飛んでしまいます。

007映画なのに、なぜだか日本の東宝映画の匂いがして、今にもキングギドラでも飛んできそうな雰囲気だ(笑)。

日本人キャストの中で、唯一、英語が堪能だと言われていた丹波哲郎(実際は違うらしい。
その証拠に後年、シドニー・ポラック監督の「ザ・ヤクザ」のオファーを受けたものの、あまりの英語の長ゼリフに怖れをなして、出演を断ったという逸話があります)は、若林映子や浜美枝らの取りまとめ役に回っていたそうだ。

ボンドが空を飛び、トヨタ2000GTが走り回る「奇妙な日本」は、一度も存在したことはないのに不思議な懐かしさすら感じさせます。

そして、ナンシー・シナトラの歌う同名の主題歌は、美しい旋律と意味深で不吉な歌詞になっていますね。
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