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グッドフェローズのkuuのレビュー・感想・評価

グッドフェローズ(1990年製作の映画)
4.1
『グッドフェローズ』
原題 Goodfellas
製作年 1990年。上映時間 145分。
巨匠マーティン・スコセッシがニコラス・ピレッジのノンフィクションを基に、『グッドフェローズ』と呼ばれるギャングたちの生き様を描いたマフィア映画。
トミー役のジョー・ペシが第63回アカデミー賞で助演男優賞を受賞。ヘンリーをレイ・リオッタ、ジミーをロバート・デ・ニーロがそれぞれ演じた。
デ・ニーロはヘンリー・ヒルに1日7~8回も電話をかけ、ジミーのキャラについて、たとえばジミーがタバコをどのように持つかなど、あることについて聴いたらしい。
その、ヘンリー・ヒルの視点から描かれる今作品。
今作品は彼を組織犯罪の世界における主要人物として描いている。
当時の実在のギャングたちは、ヒルは脇役であり、ルフトハンザ強盗に参加した他のほとんどの連中(マフィアの重要な仲間であったジミー・バークを除けば)と同じような腰ぎんちゃくやったと語っている。
あと、余談ばかりですが、当初、映画を『ワイズガイ』と名付けたそうやけど、その後ピレッジの同意を得て、無関係なテレビ犯罪ドラマ『ワイズガイ』との混同を避けるために名前を『グッドフェローズ』に変更し、撮影の2週間前に、ヒルには48万ドルが支払われたそうな。
あ!若き日のサミュエル・L・ジャクソンも出てる。

ニューヨークの下町ブルックリンで生まれたヘンリーは、幼い頃からマフィアに憧れて育つ。
地元を牛耳るポーリーの下で働き始めた彼は、兄貴分のジミーや野心旺盛なトミーらと犯罪を重ね、組織内での地位を高めていく。
そして1978年、一味はケネディ国際空港を襲撃し、600万ドルの強奪に成功。
FBIの捜査の手が迫る中、ジミーらは口封じのため事件の関係者を次々と殺害していく。

今作品は、作家であり脚本家でもあるニコラス・ピレッジの1986年のノンフィクション『Wiseguy: Life in a Mafia Family/ワイズガイ―わが憧れのマフィア人生』を原作としている。
かなり前にペーパーバックで既読。
映画の核となるのは、マフィアのヘンリー・ヒルを演じたレイ・リオッタの印象的な演技です。
2012年6月12日に亡くなったヒル(ヘンリー・ヒル・ジュニア)が、少年時代に組織犯罪の世界に足を踏み入れ、その後、強盗、盗品販売、ゼニ貸し、ハイジャック、放火、麻薬取引などなど、さまざまな活動でマフィアとの関わりを深めていく物語。
ヒルは最終的にFBIの情報提供者となり、連邦証人保護プログラムに入った(1987年にプログラムから削除されてる)。
しかし、ヘンリー・ヒルの妻を演じたロレイン・ブラッコをはじめ、マフィア役のロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、ポール・ソルヴィーノに至るまで、この映画の主役はみな巧みな演技を見せている。
今作品がこれほどの衝撃を与えたのは、それ以前のマフィア映画とはまったく異なるマフィアの冷酷な生き様を描いたからでもあると云える。
『ゴッドファーザー』はギャングをロマンチックに描き、名誉のためだけに殺人を犯すような人物に仕立ててたが、しかし、『グッドフェローズ』では、彼らのよりリアルな姿が描かれている。
暴力的で、殺人を犯す連中で、ちょっとしたきっかけで殺人を犯し、面白半分に踊らせるために人の足を撃つような連中を。
今作品はまた、1980年代にマフィアに実際に起こっていたことを描いている。
人物描写については脚色は見られるが、本と映画の原作となったヘンリー・ヒルによれば、ジョー・ペシが演じたトミー・デシモーネは90%正確であったという。
『1980年代にマフィアが受けた情報提供者の急増に呼応し、多くのファミリーが崩壊した。
それはまた、マフィア・ファミリーがますます引き金を引きたがるようになったことを反映している』と、『Gangster Priest : The Italian American Cinema of Martin Scorsese (Toronto Italian Studies)/ギャング・プリースト:マーティン・スコセッシのイタリア系アメリカ人映画 (トロント・イタリア研究)』の書籍の中にあった。
著者は、登場人物の信憑性とストーリーテリングが際立っているとも付け加えてた。
半ドキュメンタリーのようなスタイルで、製作中も事実確認が続けられていたそうな。
先にも書いたように、ロバート・デ・ニーロは、撮影中、常に実在のヘンリー・ヒルと連絡を取り合い、物事が正しく進んでいるかを確認していたと振り返る。
『2、3日おきにヘンリー・ヒルに電話して確認したんだ。 ヘンリーと話がしたいんだって言うと、彼がどこにいても探してくれるんだ。 彼は当時、証人保護プログラムに入っていたんだ』。
今作品はリアルっぽく見えただけではない。
マフィアの生活を送ってきた者にとっては、この映画は本物のよな確かな感覚を持っていたんやろな。
多くの映画ファンにとって、『グッドフェローズ』はスコセッシ監督の映画監督としての傑作の一つであると云う。
まだまだ、映画を述べるにふさわしくない小生もそう思います。
スコセッシ作品の長年の協力者であるテルマ・スクーンメイカーが、編集ですべてをまとめあげた功績は大きいんやろやぁとも。
また、スコセッシにとって、今作品は、絶好調の映画監督の手になる喜びさえ伝わる。
ストーリー自体も面白かったけど、イカれた連中を見れるのは最高かな。
スコセッシは、ストーリーテリングから切り離された派手なテクニックを駆使していたわけではない。
その一例が、レイ・リオッタがロレイン・ブラッコとニューヨークのナイトクラブ『コパカバーナ』に入っていく、今作品の伝説的な追跡ショット。
彼らがコパカバーナに入るあの追跡ショットは、現代映画で最も有名な追跡ショットかもしれない。
ザ・クリスタルズ
『Then He Kissed Me/そしてキスしてくれた』ちゅう曲の長さに匹敵する3分間。
この3分間で、特権と見返り、人間関係、権力の全宇宙を見せてくれる。
今作品は、マフィアの特権と権力を鋭く描いた作品やけど、同時に、当時のアメリカにおけるより広い社会的、文化的な力を反映した作品でもある。
ヒルは映画の中で消費主義と欲望にとらわれた男やと云える。
これは、
『アメリカの主流における同様の特徴を拡大し、倒錯的に具現化したものに過ぎないが、グロテスクなレベルにまで達している』
と誰やったかオッサンが何かの本で述べてた。
今作品の力強さを考えれば、映画とテレビの両分野で、今作品が永続的な遺産を残したとしても驚くにはあたらない。
また、今作品は、饒舌なギャングという考え方を広めたと云える。
今作品以前の映画作品のマフィアって云えば、オメルタという掟(シチリアのマフィアにおける約定。 沈黙の掟、オメルタの掟などとも言う。 マフィアのメンバーになるための誓いをするとき、互いの親指に針を刺し血を出して、それを重ね血が交わることで一族に加わったとする儀式を行うことからこの名が付いた。 俗にマフィアの十戒とも呼ばれる)のもとで活動し、何をするにもかなり寡黙な人物だと考えていた。
黙っていられないギャングがここにいる。
ここから、後の映画のおしゃべりなギャングや銃を持った哲学者が生まれる。
この現象は、クエンティン・タランティーノの初期作品や『ユージュアル・サスペクツ』などに見られるかな。
また、テレビシリーズ『ザ・ソプラノズ』では、おしゃべりなギャングたちが登場するけど、これは『グッドフェローズ』に大きな借りがあるはず。
実際、この映画に出演した俳優たちは、『ザ・ソプラノズ』で活躍することになってるし。
今作品の最大の功績は、『ユージュアル・サスペクツ』など多くの後続作品に登場する「おしゃべりなギャング」というキャラクタータイプかもしれへんなぁ。
ロバート・デ・ニーロは、『グッドフェローズ』製作時に考えていたことを思い返しながら、『結局のところ、映画がどう受け入れられるかなんてわからないんだ。 もちろん、マーティ(スコセッシ監督)が手掛けたこの映画は特別なものになるだろう。』
34年くらい経った今、今作品は単に特別というだけでなく、1990年代を代表する傑作のひとつであり、マーティン・スコセッシが製作した映画の中でもおそらく傑作の一つに違いない。

余談ながら『グッドフェローズ』ではまさしくポップ・ミュージックの名曲群!!
数多くの珠玉のヒットナンバーがほぼ引っ切りなしに流れ続けるのは音楽好きにもきっとたまらない。
またそれって、映画で既成曲を使う際の定石とは異なり、必ずしもシーンごとの時代背景を指し示すものではないのがニクい。
スコセッシの言葉によれば、選曲のセオリーは『ジュークボックス』やそうや。
トニー・ベネットの『 ラグズ・トゥ・リッチズ』(1953年)やシャングリラスの『リーダー・オブ・ザ・パック』(1964年)やローリング・ストーンズの『ギミー・シェルター』(1969年)などなど、その時々のリクエストに応じるように40曲以上がギャングの破天荒な日常風景を彩ってる。
個人的には長いシーンじゃないがセリフもなく、ただ単にタバコふかしてるだけで、デ・ニーロ演じるジミー・コンウェイが悪だくみを思いついたちゅうか、そんな感じがヒシヒシと伝わってくるシーンで流れるクラプトンのギターサウンド(クラプトンが在籍してたクリームの『 サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ』)。
あと、『いとしのレイラ』この曲は当時エリッククラプトンが所属していたデレクアンドドミノスの楽曲で、ギターイントロが印象的な前半と逆にピアノ演奏のみの後半に分かれる7分もの大作が流れる映画史上の伝説ちゃうかな。
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