MASH

龍が如く 劇場版のMASHのレビュー・感想・評価

龍が如く 劇場版(2007年製作の映画)
3.5
『龍が如く』はゲーム1作目のあらすじを知っているくらい。「三池監督×ゲーム原作」なんて地雷もいいとこな訳で、怖いもの見たさで鑑賞。だが、これが予想の斜め上の方向で僕に刺さる作品になっていたのだ。Filmarksで平均が2.6である理由は分からんでもないが、見方を変えれば割と楽しめる作品だと思う。

最初に言っておくが、映画としては酷いものだ。本筋とは関係のない話を延々とやり、特に終着点もない。メインであるべき消えた100億の話や桐生と遥の話はサイドストーリーレベル。原作では準主人公だった錦山に至っては「誰こいつ?」という扱い。ラスト20分の展開は原作ファンの神経を逆撫でするものだし、映画としてもあまりに酷いまとめ方。やっつけ仕事とはこのこと。

僕の勝手な想像ではあるが、こうなったのも監督が『龍が如く』に見出した面白さがストーリーではなかったからではないだろうか。監督は一応ゲームをしたらしいが、彼が惹かれたのはメインストーリーではないことは明らか。悪ふざけとバイオレンスの組み合わせ、それを象徴する真島吾朗の存在、そして神室町そのものとそこに住む人々。それらに何かを見出したのだろう。だから桐生一馬を主人公にした一本筋の物語ではなく、群衆劇の形が取られたのでは?

そして、それらが三池監督の魅力と見事にマッチしている(全部ではないが)。混沌とした街での群衆劇、サムいギャグにコントのような掛け合い、悪ふざけのように溢れる暴力、魅力的なキャラ造形と俳優陣の魅力を引き出す演出。そして三池監督のロマンチシズムな一面。特に映画オリジナルキャラと思われるカップルや韓国人の殺し屋(?)の話は、三池監督の魅力が詰まっている。

『龍が如く』ファンに不評なのは当たり前だし、ストーリーの体を成していないという点では普通の映画が好きな人にも受け入れ難いだろう。だけど、三池監督作品が好きな僕にとっては好きになる作品。彼の初期の作品から見られたスタイルが良くも悪くも荒っぽくぶつけられている。このスタイルを洗練した結果が2020年公開の傑作『初恋』な気がする。三池監督の作品が好きなら観て損はないだろう。
MASH

MASH