Jeffrey

トゥルー・ストーリーのJeffreyのレビュー・感想・評価

トゥルー・ストーリー(1996年製作の映画)
3.5
‪「トゥルー・ストーリー」‬

冒頭、美しい顔立ちの少年のクローズアップ。

電話を手渡され話す彼の名はサマド。彼は幼い頃に大きな火傷を負った為、走ることができない。傷の広がり、母の愛情、映画に出演できる子供を探す監督、工場の仕事、カメラに群がる無邪気な少年達。今、少年の治療過程を赤裸々にカメラが収める…

本作はイランの名匠アボルファズル・ジャリリが1996年に監督したドキュメンタリーとフィクションを融合させた1本で、彼の作品の中でもダントツに好きな映画だ。

彼の作品を全て見ていても主人公は子供であり、常に彼らの目線で映画を撮りつづけている彼のぶれない精神は徹底的に社会的地位の低い人間を撮り続けてきている英国の巨匠K.ローチと同じく頭が上がらない。

本作はナント三大陸映画祭グランプリやベネチアコンペ部門に正式出品されたり、モントリオールでも絶賛された正に型破りな彼の原点である。

まず、物語は少年との出会いから始まる。

監督が役者との会話で上映禁止にならないようにと言うワードがあるので、やはりイランではかなり検閲されているのだろうと感じる。

会話から様々な出来事がわかる。孤独感が伝わる子供を探していたり、監督の目標に頭を抱えるスタッフ達、そして本作の主人公となる少年はパン屋で見つけた。

そこでお父さんの仕事は何をしているのかやトルコ語話せるのかなど監督の質問攻めが続く。ところが翌日、関係者が行ったら少年はそのパン屋から(店と喧嘩したらしく)出て行ったそうだ。

ここから物語は彼を探す話えと移り変わる。

サマドを知る友達に彼の居場所を聞いたりし車で街を彷徨始める。そして何とか彼を見つけ出し、なぜ店を辞めたかを聞く。そこで監督は彼が足に火傷負った事を聞かされる。

ズボンを下ろしてと少年に頼み少年はそれを拒むが監督が自らズボンの裾を上げ火傷を確認する。

そうすると1ヵ月前に違う年下の少年に傷つけられた傷に監督は驚く。続くシーンでは罵詈雑言言われる少年が盗んだ盗んでないと女性と口喧嘩する場面に変わる。ここでドキュメンタリーと映画の境が曖昧になり少年は本気で泣き出し始める。

そして監督はよくやったこれはテストだと少年を(額にキスして)慰める。

次のシーンでは病院で彼の足の状態を診てもらう。そして徐々に少年が火傷した理由がわかってくる。彼は最初にパン釜に落ちて火傷したと証言していたが、実際は友達に火をつけられて人気のない場所だった為、助けるのが遅れて致命傷になったと言うことを母の口から明らかにされた。

次のシーンでは監督とスタッフ関係者が会議する描写に変わり、ここで初めて少年の焼け爛れた素足を見ること事ができる。

そして少年は道路を自転車で駆け抜ける…と少年が無事に足の手術をできるのか、映画は完成できるのかそれらを120分超えの内容で描いた秀作である。

いや〜少年が手術をして声を上げながら泣き叫ぶシーンは凄い。

相当痛いのだろう。そしていよいよ手術台に乗せられた少年は両手を縛られ、手術室でオペが開始される。チャードルに身を包む家族の心配そうな表情が非常に印象的だが、何よりこの映画の終わり方がとても呆気ない。

それには驚かされた。もっといろいろ伝えたいが、ネタバレになってしまうので控える。‬


‪キアロスタミの名前の後ろに隠れてしまう監督だが、作ってきた作品はどれも感動的だ。是非「かさぶた」と「7本のキャンドル」を円盤化して欲しい‬。
Jeffrey

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