オーウェン

不連続殺人事件のオーウェンのレビュー・感想・評価

不連続殺人事件(1977年製作の映画)
4.0
この坂口安吾の傑作ミステリの映画化作品の「不連続殺人事件」は、山奥の豪邸における、奇怪な連続殺人事件を通して、敗戦直後の人間の頽廃、狂おしさ、真情を描いた秀作だ。

当時、日活を拠点としていた曾根中生監督にとって、初の日活以外での作品。

昭和22年夏、山奥の歌川邸に十数人の男女が集まる。
歌川一馬(瑳川哲朗)が招いた連中で、小説家夫妻(田村高廣・桜井浩子)、女流作家(楠侑子)とその夫(石浜朗)、劇作家(江角英明)と妻の女優(根岸とし江)、セムシの詩人(内海賢二)など。

他に一馬の偽手紙で、画家のピカ一(内田裕也)、素人探偵の巨勢博士(小坂一也)、弁護士夫妻なども集まって来る。

彼らの多くは、一馬とその妻のあやか(夏純子)、一馬の父(金田龍之介)を含め、元夫妻、元愛人などの愛憎深い関係にあるのだった。

たちまち始まる狂宴と感情の絡み合い。
流行作家(内田良平)が殺されたのに端を発し、連続殺人事件が起きるのだった。

犠牲者は客もいれば、一馬の妹やいとこ(伊佐山ひろ子)や父もいる。
やがて、一馬も殺され、合計八つの殺人は何の脈絡もない、不連続としか見えなかった。

この不可解な不連続殺人事件の謎の解明に、巨勢博士が、挑むことになるのだが--------。

この作品は、特権階級の俗物エリートたちが、敗戦後の混乱と隔絶した山奥で、狂態を繰り広げるドラマなのですが、事態はむしろ逆であり、隔絶による単純化によって、緑の鮮やかな風景の中の人々の狂態ぶりが、混乱期の縮図を浮き立たせていると思う。

そして、殺人者の狂おしさが、戦後初期のエネルギーを邪悪に、かつ美しく語っているようだ。

まさしく、この作品は、原作者・坂口安吾のふてぶてしい人間認識を、見事に映像化したと言ってもいいと思う。
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