【1970年キネマ旬報日本映画ベストテン 第4位】
『鏡の女たち』吉田喜重監督作品。大杉栄をめぐる傷害事件である日陰茶屋事件をモチーフにしている。モデルの一人とされた神近市子がこの作品の上映差し止めを訴えたことでも知られる。
どうも吉田監督とは馬が合わない。3時間半の長尺、完成度は高いと思うがあまり面白さを見出せなかった。吉田監督は今のところ全部そう…
そもそも大杉栄については高校で習ったくらいであまり知らなかったというのもあるのかな。知っていれば興味が湧いたのかも。
過去と現在が交錯しながら進む表現は見事。大杉栄をめぐる過去と、それらを俯瞰しつつ入り込んでいく現代パートの描き分け、並びに混濁さをミックスさせて一本の映画にしたのは凄い。
ただ、ATG配給だけあってアート色が強くこれだけの時間を耐えるのはかなりの苦行。素晴らしいと思った表現はあるが、これだけ長いと辛さの方が勝ってしまう。
自由とそれがもたらす悲劇、抑圧される人々を描いた手腕はいいが、いかんせん長すぎる。良くも悪くも純アート然とした作品。観る人をかなり選ぶはず。