工藤蘭丸

奇跡の海の工藤蘭丸のネタバレレビュー・内容・結末

奇跡の海(1996年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

これは1996年のカンヌ映画祭で審査員グランプリを受賞したラース・フォン・トリアーの出世作ですかね。私も当時からタイトルだけは知っていたんだけど、なかなか観る機会がなくて、今回が初見でした。

エミリー・ワトソンはこれが映画デビュー作だったらしいけど、ほとんど彼女の熱演に尽きるような作品でしたかね。『道』のジェルソミーナを彷彿とさせるような純粋無垢な娘役で、その馬鹿正直な一途さは観ていて辛いものがあるんだけど、章の頭に入る色彩美の風景画と70年代ロックの心地よさが、ひと息つける清涼剤のような役割を果たしていましたね。

このネタバレタイトルで、結末はやや見えていたのが残念だったけど、結局彼女は自分の命を犠牲にして夫の命を救ったことになるわけで、形骸化した教会からは破門されても、キリスト教的には最大の美徳ということになるんだろうな。まあ、キリスト教の素養がない人には分かりづらい話だったかも知れないけど、なかなかグッドなストーリーでした。

なお、本作から始まる3作品は、黄金の心三部作と呼ばれているようだけど、黄金の心というのはデンマークの子供向けの本のタイトルで、貧しい少女が自分の食べ物や着ているものも、他人のために与えてしまうという内容の本になっているようです。