上海十月

暖簾の上海十月のレビュー・感想・評価

暖簾(1958年製作の映画)
4.5
最初の10分位でこの映画は前に見たことがあるなと思い出す。山崎豊子のデビュー作で半自伝的な作品である「暖簾」。川島雄三の作品は喜劇から文芸作品まで幅広い。やはり冒頭の東宝スコープによる画面構成の凄さが目を見張る。それだけでも見る価値がある。中村雁治郎と後に丁稚奉公になる主人公のやり取りを見ていて、ほれぼれする。そして何しろ森繁という稀代の名優を得て、この作品は、成立している。合成による一人二役は、神業としか思えない。ちょっと前に藤本義一の「鬼の詩/生きいそぎの記」を読んでいたので、この「暖簾」の脚本を大阪弁に直した仕事で藤本義一は、川島雄三のもとに行ったことがわかった。青森の出身を卑下して都会的でソフィスティケイトされた内容を追い求め、また体制批判精神に富んだニヒルな内容を追い求めていた監督だからこそ、本作を見ると意外な感じがする。そして川島雄三が懇意にしてる織田作之助の世界が山崎豊子の原作を借りて反映されてるような気がする。上方映画とでもいうべき作品であった。
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