Yoshi

妹のYoshiのレビュー・感想・評価

(1974年製作の映画)
3.5
本作は1974年の作品で、70年代らしい当時の街並みなどをきれいに映像に残しており、魅力的である。
ただ、いくつか80年代的なものを先取りしているところがあり、そこが面白いところであると感じた。

1つは、秋夫が営むオンボロの食堂に、地上げ屋がやってくるところ。1974年といえば、第1次オイルショックの影響で高度経済成長が終わった年であるが、そんな不景気の中でも、この15年後にピークを迎えることとなるバブル経済の萌芽が見られるというのは意外だった。

もう1つは、林隆三演じる秋夫と、秋吉久美子演じるねりの、それぞれの生き方である。すでに両親を亡くしていることから、秋夫は家父長然と振る舞ってはいるのだが、妹のねりに対してとても優しい。また、ねりは同棲相手と合わないと前触れもなく実家に戻ってきたり、さらには出家したりと、かなり奔放な人物として描かれている。
この秋生が示す優しい男性像と、ねりが示す奔放な女性像は、今となっては当たり前のものだが、当時としてはかなり新鮮に感じられたのではないだろうか。
「女性の幸せは結婚」という価値観は色濃いが。

ところで、1974年当時の日活といえば、すでにロマンポルノ路線に舵を切った後であり、本作も潤沢な予算は与えられなかったと思われるが、本作からは貧乏くささを感じなかった。むしろ、1974年の若者に不釣り合いにならない程度に、きれいな世界で物語が進行しているように見える。この辺が、藤田敏八監督の感性なのかもしれない。

最後にもう一つだけ。この当時ならではの秋吉久美子の美しさがとても丁寧に扱われていてよかった。
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