まぐろさばお

トト・ザ・ヒーローのまぐろさばおのネタバレレビュー・内容・結末

トト・ザ・ヒーロー(1991年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ローズバッドが出てくるように「市民ケーン」を意識した作りではないかと感じた。市民ケーンでは誰にもよく知られた成功者が、記憶の中では誰にもわからない喪失感を抱えながら生き続けひっそり死んでいく、その真相は誰にもわからないという映画であったが、こちらではその喪失感を何か記憶を辿って追っていくという形。
最初は赤子時代に取り替えられて貧乏な家に変えられてしまったー的なコンプレックス(それも根拠が赤ん坊の時の記憶だなんて、一体どこまで正確な認識なのか怪しいものだが)、そして優しく芸達者な父を戦争に奪われ、そこから端を発し主人公のトマは常に「自分は何者かになる」ことにおいて空っぽの自己の内側の喪失を満たすことに取り憑かれていたように思える。日陰ものとしての情欲が結びついてか、ハードボイルド探偵を夢見る。
ところが、彼のやっている行動、言動は客観視すればどれをとっても肯定的に見ることが難しい単なる傍迷惑にすぎるもので、彼が終生ライバルと憎んだアルフレッドの方が遥かにさまざまなものを彼に奪われて悲惨な人生を送っている。その最後の死に様も極めて自分勝手な思い込みでそのアルフレッドのババを引き受けてしまうというブラックジョークで終わらせている。