半兵衛

殺陣師段平の半兵衛のレビュー・感想・評価

殺陣師段平(1950年製作の映画)
3.5
歌舞伎の流れを組んだチャンバラではない、新たなリアリズムの殺陣を生み出すため四苦八苦する殺陣師の苦闘と人情ドラマを軽妙に自分流に包み込みリズミカルに捌いていくのが心地よい佳作。笑っていたと思ったら突然泣き怒っていたと思ったら励ましたりと喜怒哀楽の激しいマキノ監督の特徴は相変わらず困惑するけれど、それでも演技の達者な役者たちの熱演を見ているだけでも楽しめた。

武士のイメージが強い月形龍之介が悪口雑言をがなりたてつつ無学なりにリアリズムのあるチャンバラを追求する段平を好演、殺陣をつけるとき役者を怒鳴りつつ出来たらちゃんと誉める姿は色々な人から聞いたマキノ雅弘監督の演出時の様子を彷彿とさせる。関西弁も様になっている。

あと当時三十代前半の、女性としての色気と油ののったお芝居が全身からにじみ出ている段平の妻役・山田五十鈴の素晴らしさよ。彼女が最後に出てくるときの涙でそのあとに起こる運命を観客に示唆させる演技が圧巻(ちなみに当時結婚していた加藤嘉も本作に出演している)。

雨や雪など、気候をシーンごとに巧みに使い登場人物の心情を繊細に彩る演出も粋。
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