クシーくん

黄金作戦・追いつ追われつのクシーくんのレビュー・感想・評価

黄金作戦・追いつ追われつ(1966年製作の映画)
3.7
何の気なしに観たが、面白かった!
シド・フライシュマン原作の児童文学「ぼくのすてきな冒険旅行」原作、60年代ディズニー実写らしさに溢れた、冒険活劇という言葉がぴったり当てはまる楽しい作品。
50年代頃のディズニー実写映画は海底二万哩を除けばいずれもディズニー映画でしか見かけない準専属俳優か、あるいはAIP映画でしか見ないような、少々お地味なキャスティングが多かったのだが、今回はロディ・マクドウォールにカール・マルデン、スザンヌ・プレシェットなど、微妙に豪華になっている。

19世紀半ば、ボストンの大富豪フラッグ氏が亡くなる。生前の放漫財政が災いして、遺産どころか屋敷まで抵当に入っているほどの借金まみれの為に、残された二人の孫、アラベラ(スザンヌ・プレシェット)とジャック(ブライアン・ラッセル)は路頭に迷うことになってしまう。冒険に憧れるジャックはすぐさま家を飛び出し、ゴールドラッシュに湧くカリフォルニア行きの船に密航を企てる。慌てて彼を連れ戻しに追いかけてきた忠実な執事グリフィン(ロディ・マクドウォール)も密航者に殴られ、気絶している内に船は出航してしまう。かくして黄金を求めてグリフィンとジャックの西部の旅が始まる…というお話。

音楽はおなじみシャーマン兄弟。軽快なリズムに加え、途中途中に挟まれる切り絵アニメも独特で味がある。乱暴者にぶっ飛ばされると空高く飛んでいくなど、徹底的に漫画チックなのが微笑ましい。一方で、詐欺師が開拓民によってあわや絞首刑にされそうになったり、或いは二人を追いかけてやって来た良家のお嬢様がガラの悪い酒場でダンサーになっていたりと、妙に危うい、西部劇らしいと言えばらしいダーティな描写がディズニーらしい陽気さで描かれているのもシュールだ。

何と言っても主役のグリフィンを演じるロディ・マクドウォールが知恵を働かせてあの手この手で難局を乗り切る所が楽しい。頭は切れるし紳士的だが腕力はからっきしで実はお嬢様に惚れているという、ステレオタイプな愛すべき若執事をコミカルに、見事に演じきっている。マクドウォールというと、「猿の惑星」のコーネリアスや、以前観た「クレオパトラ」の皇帝オクタヴィアヌス、もしくは子役の頃しか知らず、子役時代を除けばいずれも際立った個性を感じなかったのだが、本作を観てすっかりファンになってしまった。是非他の作品も今後観てみたい所。
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