ノットステア

グラン・トリノのノットステアのレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.6
○感想
テーマは、生と死、差別意識と友人と親族、復讐

最初はなかなか入り込めなかった。
それでも観ていくうちにおもしろくなってきた。
ラスト30分、のめり込んでた。

以下、ネタバレあり











こんな決着の付け方なんて見たことも聞いたこともない!!予想できなかった。衝撃と驚きと渋さカッコ良さ潔さ。
だけどその決着の付け方は悲しくて寂しいものだった。
悪い奴らがいる限り、友人に平穏は訪れないと悟る。悪い奴らを殺し復讐し平穏をもたらすのかと思った。違った。悪い奴らに自分を殺させる。目撃者のいる状況で、確実に刑務所に入れてやる。
それはウォルトだからできる方法なのではないか。
病に冒された体、愛する妻を失った状況、親族とはうまくいっていないという状況だったからこその選択だと思う。
人を殺したあとの最悪の気分を知っているウォルトだからこそ友人に同じ思いをさせないための選択。
特殊な決着だった。その人そのキャラクターならではの決着。考え抜かれた決着。

ウォルトはラストでスーツを仕立てる。決着をつけるときはスーツを着るのかと思ったら違った。

ウォルトは歯に衣着せず真実を語るような人物。東洋人たちに対して嫌悪感を抱いていたウォルトだが、パーティーに呼ばれると歓迎されていない感じなのに料理を楽しんで食べちゃう。美味しいものは美味しいのね。人との交流も少なくなってたから生活も食事も味気なかったのかな。ビーフジャーキーばっかりみたいだし。

謝罪をしようとしてるんだから受け入れろよっていうタオの家族のやり方は気にくわなかった。



○印象的なセリフ
ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)「"仕事がない"なんて話はするな。車がない。恋人がいない。未来も肝っ玉もないなんてことを言うな。いいな?」

ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)「俺の心は安らいでいる」

ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)「意気込みすぎるとやられる」

ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)「"人を殺してどう感じるか"?この世で最悪の気分だ。それで勲章などもっと悪い。相手は降参しかけてたお前のようなガキだった。そいつの顔をあの銃で撃った。毎日思い出す。その気持ちが分かるか?俺の手はそういう血で汚れてる。だから今夜は一人で行く。」
タオ「ウォルト!僕も行かせろ!」
ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)「お前は大人になった。自慢できる友達だ。お前の人生は今から。俺は関わったことに決着をつける。それも一人でな」
タオ「待って!ウォルト!」



○あらすじ
クリント・イーストウッド演じるウォルト・コワルスキーはポーランド系アメリカ人で隠居生活をしている。フォードの自動車組立工として50年勤めた。デトロイトが東洋人の町になってしまったことを悲しむも、そこでの生活を続ける。愛車はグラン・トリノ。自宅のポーチでビールを缶のまま飲みながらグラン・トリノを見るのが趣味。
朝鮮戦争で人を殺したことを、しかも命令ではなく自ら人を殺すことを悔いている。
頑固な性格のため、息子たちや孫たちからも嫌われている。わずかな友人と悪口を言い合いながら生活をしている。

最愛の妻を亡くしたところから物語は始まる。
亡き妻の願いで、神父がウォルトに懺悔をさせようとする。ウォルトは断り続ける。

隣の家にはモン族の家族が住んでいる。モン族の少年タオとその姉スー。二人のいとこはギャング?チンピラ?で銃を持っている。

ギャングはタオを弟分にしようとする。強い意志のないタイは、いとこにテストされる。それはウォルトのグラン・トリノを盗むこと。
家に人が忍び込んでいることに気づいたウォルトはタオに銃を向ける。

グラン・トリノを盗むことに失敗したため、ギャングたちはタイの家を襲う。ウォルトは銃を向けてその場を治める。
スーはウォルトをホームパーティーに招く。ウォルトはタオたちの家族に親しみを覚える。

スーとその母親はウォルトにタオに仕事を与えてほしいと頼む。それは報酬目的ではなく、車を盗もうとしたお詫び。ウォルトが断るとスーの母親は侮辱だと言う。ウォルトは仕方なく受け入れる。
ウォルトはタオに向かいの家の修理をさせる。

ウォルトは吐血する。病院で診断を受ける。

ウォルトはタオに男になってほしいと思う。女をデートに誘うよう伝える。それから、男との話し方も教える。
ウォルト「"仕事がない"なんて話はするな。車がない。恋人がいない。未来も肝っ玉もないなんてことを言うな。いいな?」

ウォルトはタオに仕事を紹介する。

いとこのギャングがタオに嫌がらせをする。ウォルトがタオに貸していた工具を壊される。
ウォルトは工具はどうでもいいが、タオを傷つけられたことに怒る。ウォルトはギャングの跡をつけ、殴りつけて報復する。

ウォルトはタオが女の子をデートに誘ったと知る。グラン・トリノをタオに貸すと言う。

ギャングはタオの家に銃弾を乱射。スーを強姦&暴力。

ウォルトは自分が引き起こしてしまったのかと悔い、どうすべきか考える。神父に相談。もし神父が俺なら?タオなら?神父なら?
ウォルト「俺の心は安らいでいる」

復讐したいタオ。

ウォルトは冷静に考えて行動しなければうまくいかないとタオに話す。家で頭を冷やしてから4時に来い。
それまでの間にウォルトはスーツを仕立て、髪を切り、神父頼み懺悔をする。

ウォルトはタオに勲章のバッジをあげる。
ウォルト「意気込みすぎるとやられる」
ウォルトはタオを家に閉じ込める。
ウォルト「"人を殺してどう感じるか"?この世で最悪の気分だ。それで勲章などもっと悪い。相手は降参しかけてたお前のようなガキだった。そいつの顔をあの銃で撃った。毎日思い出す。その気持ちが分かるか?俺の手はそういう血で汚れてる。だから今夜は一人で行く。」(神父に対して行った懺悔よりもこちらのほうが本当の心の内を懺悔していた。)
タオ「ウォルト!僕も行かせろ!」
ウォルト「お前は大人になった。自慢できる友達だ。お前の人生は今から。俺は関わったことに決着をつける。それも一人でな」
タオ「待って!ウォルト!」

愛犬を隣の家のおばあちゃんに預ける。ウォルトは決着をつけるために一人でギャング達の住みかに向かう。
ウォルトが来ると予想し、神父は警察をギャングの家の前に呼ぶ。しかし、警察はその場に留まるわけにはいかないので、神父と共に立ち去る。

ウォルトはタバコをくわえる。火を求める。しかし、ギャングたちはライターを持っていない。銃をウォルトに向けるギャングたち。ウォルトは銃を取り出すかのように上着のポケットに手を入れる。ギャングはウォルトを射殺。ウォルトがポケットから取り出そうとしていたのは第一騎兵師団のジッポー。

タオとスーは現場に向かう。丸腰だったウォルト。
目撃証言があるため、ギャング達は長期刑。

葬式。スーツを来て横になっているウォルト。
父や祖父の死を悲しむ気持ちよりグラン・トリノの相続を楽しみにしていそうな親族たち。
弁護士がウォルトの遺書を読む。愛車グラン・トリノは友人のタオに譲る。