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木枯し紋次郎 関わりござんせんのHKのレビュー・感想・評価

3.7
「あっしには関わりのねえこって・・・」
中村敦夫が主演した大ヒットTV時代劇「木枯し紋次郎」を菅原文太で映画化した第2弾。
監督も同じく中島貞夫で1作目の3カ月後にはもう公開されています。早い!
チャンバラ時代劇というよりは道中合羽に三度笠の股旅ヤクザもの。
今回の音楽は『仁義なき戦い』の津島利章で前作よりはイイ感じ。

脚本は野上龍雄で原作の一部を活かしつつもストーリーはオリジナル。
しかし原作やTVシリーズに負けず劣らず容赦なしの悲劇と哀愁の紋次郎ワールドが展開します。
誰が書こうが“木枯し紋次郎シリーズ”にハッピーエンドは決して訪れません。

本作では原作とTV版では紋次郎が子供の頃に死んだはずの姉おみつが生きていた設定。
おみつは、生まれてすぐ親から蒟蒻で間引かれそうだった紋次郎の命の恩人でもあります。
この飯盛り女の姉を演じる市原悦子(当時36歳)がスゴイ。上手い。エグイ。
普通なら子供の頃に生き別れになった姉弟が感動のご対面のハズですが・・・

“木枯し紋次郎シリーズ”は信じた相手からは裏切られ、美しい夢や希望や思い出は全て無残に踏みにじられる世界です。
たとえ相手が好きな人だろうが親兄弟だろうが、恩人だろうが・・・

やはり菅原文太がイイ。ピュアで他の作品で見せる荒っぽさや上から目線が一切ありません。
先日亡くなった田中邦衛も紋次郎を慕うとてもいい役です。
悪役は前作に続いて続投の山本麟一(全く別人の役)の他、大木実や汐路章や志賀勝らの顔も。
どこかで見た顔が出てると思ったら月亭可朝(「ボインは~♪」を唄ってた人)でした。

“木枯し紋次郎” 上州新田郡三日月村の貧しい農家に生まれ10歳で家を捨て渡世人に。
トレードマークは頬の傷と口に咥えた長い楊枝(朱塗りの鞘はTV版のみ)。
TV版の方は市川崑がS・レオーネのマカロニ・ウェスタンを意識したイメージも魅力。
また、TV[版の中村敦夫(当時32歳で文太より七つ年下)のほぼ無表情に対し、文太は僅かに憂いを帯びた表情から苦悩の表情までを微妙に表現します。

一膳めしやでご飯にメザシと味噌汁をぶっかけて食べる紋次郎スタイルが懐かしい。
全編に漂うこの救いようの無さには不思議な中毒性がります。
文太の映画版が二作で終わってしまったのがもったいない。

ハッピーエンドに飽きた人におススメの作品です。興味があればTV版も是非!
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