Mikiyoshi1986

ウンベルトDのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

ウンベルトD(1952年製作の映画)
4.6
本日11月13日は1974年に没したネオレアリズモの巨匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督の命日。

敗戦後のイタリア社会で生きる過酷さを描いた"ネオレアリズモ"はたちまち民衆の心を捉え、
そのムーヴメントは世界中へと知れ渡りました。

中でもその旗手となったデ・シーカは46年「靴みがき」で戦後混乱期の社会に苦しめられる子供を描き、
48年「自転車泥棒」で戦後の不況で窮地に立たされる失業の父親を描き、
そして51年の本作「ウンベルトD」では戦後数年のインフレによって困窮してゆく老人を描き、
デ・シーカと脚本家チェザーレ・ヴァザッティーニはここにイタリア三世代に渡るネオレアリズモの傑作群を完成させたのです。

主人公ウンベルト・ドメニコ・フェラーリは年金暮らしの元公務員であり、愛犬フライク
と共に高慢な家主の部屋を間借りしている独居老人。

戦後の復興によって社会は徐々に豊かさを取り戻している反面、その皺寄せであるインフレは貧富の差を一層拡大させ、
人々の心はなおも貧しいまま。
ここには人情の欠片すらも見当たらず、彼に理解を示すのは愛犬とメイド娘のマリアだけなのでした。

増えぬ年金と家賃の値上げで金策に奔走するものの定年した老いぼれに手立てなどあるはずも無く、とうとう途方に暮れた彼はある行動に出ます。

ラストはもちろん、自身のプライドに葛藤するウンベルトやフライクを必死に探すウンベルト、芸をする利口なフライクの愛らしさなど、胸を打つシーンは数知れず。

またメイドのマリアでさえも実際明日は我が身の立場であり、
本作の持つリアリズムはより現代社会に通ずる普遍性を十二分に携えているのです。
Mikiyoshi1986

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