デブチンバラ

浮草のデブチンバラのレビュー・感想・評価

浮草(1959年製作の映画)
4.5
小津安二郎の唯一の大映作品。宮川一夫の撮影によるところが大きいとは思うのだが、小津の中ではかなり異色の作品だ。内容的にも静の印象が強い小津作品の中にあって、動の印象が強い映画である。特に、激しく雨が降る中、道を挟んで軒下で対峙する中村鴈治郎と京マチ子が言い争う場面は映画史に残る名シーンであると思う。そして、若尾文子に誘われて川口浩が芝居小屋に来る場面。廊下を先に行く若尾文子についていく川口浩が立ち止まるとそこは影になっていて、川口浩の顔が全く見えなくなる。そこに若尾文子が”あんた、震えとんの?”と声を掛ける。表情が見えないのでどんなふうに震えているのかわかない。その後の展開を考えると期待に胸を膨らませているかもしれない、観客に想像させる演出。凄いとしか言いようがない。
デブチンバラ

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