明石です

ペンデュラム/悪魔のふりこの明石ですのレビュー・感想・評価

4.5
狂信的な神父に「魔女」と認定され、異端審問という名の拷問にかけられる不運な女性の話。エドガー・アラン・ポーの有名な小説『落とし穴と振り子』をスチュアート・ゴードンが映画化した作品。脚本はデビュー以来の相方デニスパオリで、幽玄なオーケストラを奏でるのはリチャードバンドと、いつものゴードン面子!『死霊のしたたり』のウェスト君ことジェフリーコムズも悪役トルケマダの腰巾着として活躍してる笑。

異端審問で知られる極悪人トルケマダ神父のもと、汝の隣人を愛せよ、と説きながら庶民を「宗教裁判」の名を借りて拷問、処刑するという、キリスト教が専横のかぎりを尽くしていた15世紀のスペインのお話。ポーの原作はたしか何の前触れもなく、異端審問にかけられた男が気付けば振り子(揺れる刃)の下にいたという展開だったのに対し、本作では振り子の下に行き着くまでの物語に大胆な脚色がなされていて、極悪の異端審問官と、聖母マリアを思わせる清廉潔白な美女の織りなす愛憎劇というドロドロしたストーリーに。

デビュー作以来徹底されているスチュアートゴードンの絵画のような画作りは、煌びやかな書体に禍々しいストーリーを乗せるポーの作風とイメージが近いような気がする。変態映画ばっかり作ってるのに、映像自体は、原色の色使いとしっとりした暗闇を合わせたゴシックホラー風の格調高い感じ。今作も美女を裸にして「悪魔の印」がないか体じゅう調べ尽くしたりする変態の極みみたいなシーンはあるけど、中世が舞台のかっちりした映像を手抜かりなしに綴ってみせる感じはさすがのゴードン節。清楚な美女と血に塗れた変態男に彩られるこのクラシカルな世界観が堪らんのです。

自身が魔女認定した女性と十字架のそばで交わろうとする欲望の塊みたいなトルケマダ神父は、『死霊のしたたり』のヒル博士を思わせるゴードン印のねじれまくった極悪人。民を救うのは拷問による魂の解放のみ!と信じるトチ狂った価値観は最高で、神に仕える男らしく美女を襲う行為を途中でやめ(正確には勃たず笑)、口封じとして彼女の舌をハサミで切るという理不尽さよ、、しかしそこは熱心なキリスト教徒なので、彼女の清廉潔白さの前に平伏し、、最高か??

——好きな台詞
Death is certain, only the time is uncertain.「死は確実だ。問題はいつ死ぬかだけだ」
明石です

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