「DRAGON QUEST -ダイの大冒険-」の読み切り「ダイ爆発!!!」を改悪アレンジした作品。
■ 概要
『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の劇場用アニメ作品第1作目。
テレビシリーズに先駆けて、最初に制作されたアニメ版でもある。
■ あらすじ
『ダイがモンスターと暮らすデルムリン島にレオナがやってきた。
魔王復活の予言を調べにきたレオナを案内するダイは、島の様子がおかしいことに気付く。』
■ 感想
◎音楽
本作で唯一素晴らしいと思う部分。
ドラゴンとの戦闘:DQ3戦闘のテーマ
ハドラーの演説:DQ3冒険の旅(フィールドのBGM)
ハドラー戦:DQ3勇者の挑戦(ゾーマ戦のBGM)
などと、基本的にDQ3のBGMをアレンジしたものが使用されている。
やはり、戦闘時にゲームのBGMが流れてくると、こちらも上ってくるな・・・。
現在放送中の「ドラゴンクエスト ダイの大冒険(2020)」では、権利的に困難なためか、ドラクエのBGMは使用されていなく少々残念な部分はある。
だが、その代わりそれ以外の部分で(特に戦闘シーン)、この頃とは比べ物にならないくらいクオリティが高いからな・・・。
早くバラン以降の話が見たいな・・・。
◎シナリオ
基本的に、読み切り「ダイ爆発!!!」をアレンジしたような話。
個人的には、別にアレンジする必要がなくそのまま映像化すればいいと思うのだが、あろうことか本作は敵を「バロン(人間)」から「ハドラー(魔王)」に変更している。
これは改悪以外の何ものでもない!!
「ドラゴンクエスト ダイの大冒険」は、テーマの一つに「人間の悪意の醜さ」というものがある。
原作のようにバロンが己の欲を満たすために、主であるレオナ姫や何の罪もないモンスター達を傷付けるからこそ、そのテーマ性が際立つのだ。
その役目をハドラーにしたら、何の捻りもテーマ性もない、単なる勧善懲悪になっている。
そりゃ、ダメでしょ!!!
まあ無理やりでも、ハドラーを入れたい気持ちは分からなくもないが・・・。
とはいえ、本作は「人間の悪意の醜さ」というテーマが完全にないのかというと、そういう訳でもない。
後述するが、その役目を中途半端にレオナが担っている。
何でそうなるの・・・。
そういえば、本作では「ハドラーがデルムリン島に封印されている」といった設定になっている。
ブラスは何で15年もデルムリン島にいて、ハドラーの存在に気付かなかったんだ??
◎キャラクター
【ダイ】
基本的には、原作と大まかな設定や性格は変わらない。
あえて変わったといったら、沸点が低くなった事だろうか・・・。
原作に比べて、竜の紋章を発動するきっかけ(怒り)が弱いように思える。
原作では、心を許したレオナを助けるため、そして自分の不甲斐無さに怒りを爆発させ発動した。
この流れは全然納得がいく。
しかし本作の場合は、ダイの友達(モンスター)がハドラーによって正気を失わされただけだ。
特に、レオナを傷付けた訳でもなく、友達(モンスター)も苦しんだりしている様子はない。
あえて言うなら、ハドラーによって正気を失わされた「おばけキノコ」がレオナに対して「あまいいき」で眠らせたくらいだろうか・・・。
まあ、一応攻撃といったら攻撃なのかもしれないけど・・・。
因みに、当の本人のダイはというと・・・普通に友達(モンスター)を吹っ飛ばして傷付けている。
しかも1匹や2匹じゃない・・・。
最低でも15匹は吹き飛ばして、戦闘不能になるレベルのダメージを負わせている。
ダイ「俺は・・・許さない。絶対に許さないぞ!!!」
と、ハドラーに向けて敵意を露にしてるが、大切な友達を戦闘不能にしたのはお前だからね・・・。
因みに原作でもハドラーが復活した際に、友達(モンスター)が正気を失うシーンはあったが、その時のダイの感情は怒りではなく、ただの困惑だった・・・。
どうせだったら、
正気を失った友達(モンスター)が、レオナを傷付ける。
↓
ダイ「レオナァ!!」
と、ダイがレオナの元に駆け寄る。
↓
怒りに満ちた目で、友達(モンスター)を見る。
↓
友達(モンスター)の邪悪な表情は変わらないが、目に涙を浮かべている。(「幽遊白書」のDr.イチガキチームみたいな感じ)
↓
ハドラーがその姿を見て、大爆笑!!!
↓
ダイ、大激怒!!!(竜の紋章を発動)
って流れの方が良くないか??
それと、本作で最も上がるであろう、ダイが竜の紋章を発動した際に、皆がそんなに驚いていないのは、どうなんだ??
ここはもっと驚かないと・・・。
むしろ、その直後のハドラーが真の姿を見せた際の方が、みんな全然驚いてる。
まあ後述するが、私自身ハドラーのデザインが、私の知ってるハドラーと余りにも違い過ぎて驚いたが・・・。
でも、スタッフが狙ったのはそういう驚きじゃないだろ。
この場合、
ダイが「竜の紋章」を発動
↓
ハドラーが真の姿を見せる
ではなく、
ダイが「竜の紋章」を発動
↓
ハドラーの手下(ガーゴイルなど)にダイを襲わせる。(出来ればその前に、ダイがハドラーの手下に立ち向かうも、軽くボコられるシーンを入れた方が、更に効果的)
↓
ダイがハドラーの手下を瞬殺する。
↓
ハドラーが真の姿を見せる
の方が、普通のダイと「竜の紋章」発動時のダイの対比を見せ、より一層のカタルシスを得る事ができ、同時にハドラーの姿にも驚くことが出来る。
それとダイが呪文が苦手といったシーンは、一つくらい入れるべきではないだろうか・・・。
唯一、ブラスがダイに関して驚いたのが、ダイがバギクロスをハドラーに唱えた時である。
原作やアニメを観たことがある人なら、ヒャドやメラさえロクに唱えられないダイが、バギ系の最上位呪文(現在の最上位はバギムーチョ)のバギクロスを唱えた事でカタルシスが生まれる。
だが、本作はダイが呪文が苦手といった描写が丸々カットされているので、ブラスが何に対して驚いてるのかが少し分かりにくい。
あと、ギャグシーンを抜かして、ダイは一切戦闘を行っていないので、「竜の紋章」を発動したことに依って、どの程度強くなったのかが、劇中を見る限りでは全然分からないと思う。
島を案内するシーンなど、割とどうでもいいシーンを入れるくらいなら、そういったシーンをしっかり描写して貰いたいものだ。
【レオナ】
原作のレオナは、「14歳になったら、地の神の恩恵をこうむるための儀式を受けなくてはいけないから、デルムリン島に来た」といった設定になっていた。
何の許可もなく、突然兵士をぞろぞろと引き連れて、無断で島に上陸するのはどうかと思うが(せめて許可取ってから上陸しろよ)、まあ一応、納得は出来る。
だが本作の場合、レオナがデルムリン島に来た理由は「ハドラー復活の予言を調べるため」である。
パプニカ王国側は、あらかじめデルムリン島に大量のモンスターがいる事は、充分理解している。
そんな所に、何故に姫様自ら出向く必要があるんだ??
原作の場合、洗礼の儀式を受ける必要があるので、レオナが行かなければならないが、今回の場合は、別に来る必要はないだろう・・・。(因みに、どういう儀式なのか原作で語られる事はなかった。)
まあ、原作のレオナは好奇心旺盛かつ行動力のあるキャラクターなので、王の命令を無視して勝手に来たのだと予想する事も出来る。
だが、本作ではそういった面を一切見せていない。
見せているのは、モンスターを殺害する闘争心だけだ。
・デルムリン島上陸前のセリフ
レオナ「悪いモンスターは、みんな私に任せてちょうだいよ!!」
・デルムリン島上陸の際、モンスター出現時のセリフ
レオナ「さあモンスターども、私が退治してやるわ!!」
・モンスターにギラを放とうとした際のセリフ
レオナ「覚悟しなさい!魔王の手先!!」
虐殺する気満々じゃねーか!!
完全に「ハドラー復活の予言を調べる」というのは表向きで、真の目的はデルムリン島に生息するモンスターを虐殺するのが目的としか考えられない!!!
しかも、自分たちからモンスターに攻撃を仕掛けといて、モンスターのせいにするって・・・。
原作では、ミナカトールに於いてレオナの象徴は「正義」と判明するが、少なくともこの話のレオナの象徴は「クズ」だろう。
【ハドラー】
ハドラーのデザインが原作と全然違う。
「ミストバーン」と「シドー」と「デュラン」を混ぜたようなカッコイイデザインになっており、大きさも鬼眼王バーン並みの巨体になっている。
パッと見では、原作のハドラーよりも強そうな感じがする。
だが、カッコイイデザインとは裏腹に、セリフや行動が如何にも小者なので、全く脅威に思えない。(原作初期もダイにビビって鼻水垂らしてたから大概だが)
だが、それ以上に、色が問題だ。
ハドラーと言えば、深緑や黒をメインとした如何にもザ・魔王といったイメージがある。
しかし、本作のハドラーの色は何故か可愛らしいピンクだ。
いや、何でだよ!!!
何で、魔王なのにピンクって真逆じゃねーか!!!
全然威厳ねーわ!!
魔王でピンクってダーブラくらいのもんだぜ!!!
また、ハドラーといえば「地獄の爪(ヘルズクロー)」や「イオナズン」、「ベギラゴン」などをメインに戦うが、本作のハドラーは巨体を活かした「踏みつけ」がメインである。
「イオナズン」や「ベギラゴン」といった呪文は一切しない。
物理攻撃オンリーだ。
全くといっていい程、魔王といった感じがない。
ただのカッコイイ「うごくせきぞう」である。(そういや、鬼眼王バーンも物理攻撃オンリーだったな・・・。)
メインは物理攻撃でいいから、せめて「ベギラゴン」の一つでも唱えて欲しかった・・・。
■ 総括
音楽は、DQ3のアレンジを使用し、「ダイ爆発!!!」をそのまま映像化すれば良かったのに・・・。