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海外特派員のtoriten45のレビュー・感想・評価

海外特派員(1940年製作の映画)
3.1
サスペンス、アクション、ロマンスありの娯楽大作。

ヒッチコックが活動の場をイギリスからハリウッドに移して『レベッカ』('40)で大成功を収めた直後の作品です。

第二次世界大戦が勃発する直前の1939年の緊迫した時期に、アメリカの新聞記者(ジョーンズ)が特派員として任命され、戦争突入の機密情報を探るためにヨーロッパに派遣されます。

死んだと思われた人が実は生きてたー、とか意外な人が黒幕だったー、などといったサスペンスが展開されるなか、風車、大聖堂、飛行機墜落のシーンなど、観る者を飽きさせないヒッチコックならではの映像テクニックが続きます。

ラストは唐突すぎて違和感があるかもしれませんね…。ドイツ軍による空爆の音が鳴り響く中、ジョーンズがラジオ放送を介して「アメリカは世界に残る最後の光です!」といった感じでアメリカ市民に訴え続け、後ろでアメリカ国歌が流れて終わるんです。

どうやら本作は当時のアメリカ世論を誘導するために作られたともいわれており、ナチスのプロパガンダの天才ゲッペルスからは「プロパガンダの最高傑作」と評されたんだそうです。

そこは特に気にならないのですが、今ひとつと感じたのは肝心の主人公の立ち位置があいまいで、誰に気持ちを寄り添って観ればいいのかわかりにくいところですかね。ジョニーは後半になると影が薄くなり、代わって同じ記者仲間のスコットが活躍するんです。あれ?って感じちゃう。

それと、主要人物のフィッシャーと娘キャロルの親子の物語があって、これがちょっと余計に感じてストーリーの勢いを削いでしまっているように思いました。

ヒッチコックが好きで、より深く知りたいかたには見過ごすことができない作品かもしれませんが、ヒッチコックを見たことない方は、まず先に最大のヒット作『サイコ』('60)を観ていただくことをお勧めしますー。その他『鳥』('63)とか『裏窓』('54)、『レベッカ』なんかも。
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