ぶみ

暴走機関車のぶみのレビュー・感想・評価

暴走機関車(1985年製作の映画)
4.5
興奮、沸騰点。

黒澤明原案、アンドレイ・コンチャロフスキー監督、ジョン・ヴォイト主演によるパニック・アクション。
運転士を失ったことにより暴走を始めた4重連のディーゼル機関車と、そこに偶然乗り合わせていた人々の姿を描く。
遠い昔、よく地上波テレビで放映しており、鉄道&パニックものが大好きな私はその度に何度となく心躍らせて観ていた作品で、今般、Amazon Prime Videoにてサブスク配信されたことから、久々の再鑑賞をした次第であり、多分字幕版は初鑑賞。
機関車に乗り合わせる脱獄囚マニーをヴォイト、バックをエリック・ロバーツ、女性乗務員サラをレベッカ・デモーネイ、マニーとバックを追うランケン刑務所長をジョン・P・ライアンが演じているほか、ケネス・マクミラン、カイル・T・ヘフナー等が登場。
物語は、前半はマニーとバックが刑務所から脱獄する様が、中盤以降は、二人が逃げた先にあった操車場で乗り込んだ機関車の運転士が、出発直後に心臓発作により転落死、運転手不在で暴走する様子が描かれるため、脱獄ものとパニックものという、一粒で二度おいしい内容となっている。
鉄道好きからすると、貨車をけん引していない状況で、機関車が4重連で走行するなどというのは、日本では考えられない状況であり、そんな機関車が雪が舞い散り、寒風吹きすさぶアラスカの広大な平原を疾走する姿を見るだけで、テンションは爆上がり。
とりわけ、機関車が登場した時の、得も言われぬ不気味さと迫力や、動き出した時に奏でられるトレヴァー・ジョーンズによる80年代ポップスの雰囲気溢れる劇判たるや、私の心を震わせるには十分であるとともに、その機関車も4台全てが同じではなく、貫通扉の有無等、微妙に型式が違い、それが物語の鍵を握っているのも面白いところ。
何より、暴走する機関車を止めようと指令所で奮闘する鉄道職員、機関車に乗り合わせてしまった脱獄囚と乗務員、それに加え、マニーを執拗なまでに追いかけるランケン所長と、それぞれの立場の人々のドラマがきちんと描かれており、含みを持たせたようなラストシーンについては、私の中で強烈な印象を残しているもの。
加えて、あらためて観ると、バックを演じたロバーツがジュリア・ロバーツの兄かつエマ・ロバーツの父であったり、エンドロールを何気に眺めていると、刑務所でバックと闘ったボクサーが、駆け出しの頃のダニー・トレホであったりと、気づくことが多かったのも収穫の一つ。
私のベストムービーの一つであるトニー・スコット監督『アンストッパブル』でも、暴走する機関車がモンスター的な雰囲気を醸し出しているのを筆頭に、本作品のオマージュが数多く散りばめられていることから、鉄道パニックものとしては、金字塔とも言っても過言ではない仕上がりであり、脱獄の緩さは感じられたものの、CG夜明け前の実写による迫力満点の映像のもとに疾走する機関車で繰り広げられる熱き人間ドラマに、積もった雪も溶けそうな傑作。

〜No beast so fierce
  but knows some touch of pity.
   But I know none ,
    and therefore am no beast.〜

あれが俺のリムジンだ。
ぶみ

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