映画の味方あっつマン

捜索者の映画の味方あっつマンのレビュー・感想・評価

捜索者(1956年製作の映画)
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2018年の映画初めは、ジョン・フォード監督による西部劇「捜索者」。

インディアンのコマンチ族に弟一家を殺され、二人の姪をさらわれた男イーサン(ジョン・ウェイン)。捜索を続けやっと探し当てた姪は、インディアンの言葉を操り、イーサンから逃れようとする——。

本作は、今のアメコミヒーロー以上に、西部劇が流行っていた50年代に制作された。西部劇の主人公は、当時のヒーロー像を体現している。その当時のフロンティアスピリットに溢れるヒーローたちが戦っていたのは、インディアン(白人以外の種族)だった。

西部劇があまり日本で人気が無いのは、このアメリカ白人中心主義的なヒーロー像に、日本人が共感できないからだと思う。(※その点、最近のアメコミヒーローの敵は、宇宙人・ミュータント・邪神・犯罪者なので、日本でも受け入れやすい)

「捜索者」はそんな西部劇の中でも、少し様子が違う。主人公のイーサンは、インディアンを毛嫌いしており、種族として憎んでいる。探していた姪がインディアンと共に暮らすと言い出すと、姪を殺そうとする始末…。また、本作には、味方側にインディアンと白人の混血であるマーチンがおり、イーサンは彼のことも毛嫌いしていた。そのマーチンは、イーサンに姪を殺させないように守る描写もあり、善人として描かれている。

このように、監督のジョン・フォードは、イーサンを正しいヒーローとして描いていない。そのため、当時は散々酷評されたらしい…。しかし、近年では見直され、2008年には「AFI's 10 Top 10」で、西部劇部門の一位に輝いている。これはジョン・フォード監督が、白人中心の描写にいち早く疑問を持ち、時代の先取りをして一石を投じていたのが、今になって見直されたからだと思う。(※あくまで私見です)

なんだか小難しいことを書いてしまったけど……。

「捜索者」は、銃撃戦や乗馬シーン、広大なテキサスの風景など、西部劇・アクション映画としても非常に見応えがある。最後の総力戦での馬の疾走シーンは、最高にかっこいい。

時代を先取りしたテーマ性とアクションが両立されていて、文句なしにオススメできる作品。