ベルイマンは初期のこんな小品の中にも、
神と人間の対話を描いていたんだな。
バレリーナのマリー。
リハーサル中の停電によって、
稽古が夜になるという。
ふと、
青年ヘンリックと情熱的に愛し合った夏を思い出す。
とても素敵な思い出になるはずが、
とても残酷な夏の日々だった。
神はいないと絶望するマリー。
誰にでも、自分の人生のハイライトとなるような、
シンボリックな夏があったはず。
今になれば、その思い出は、甘酸っぱく切ないものだったりするわけで、
その時絶望していても、長年生きていればこそ、
そういう境地に達するものです。
若いころは、
今ある自分の周りのキラキラしているものがすべてのように感じるが、
大人になればそのキラキラしたものが失われ、
変わってそれは素敵な追憶として残る。
映画は、
『今がよければいい、前を向いて生きよう』と、
とても素晴らしい人生賛歌として終わるのだが、
モノクロの画面がとらえた北欧の美しい風景が神を感じさせ、
登場人物の心象を表現するあたりなど、
やっぱりベルイマンはただものではない!
レコードジャケットの落書きが、
可愛いアニメーションになるなんていう、
楽しいシーンもある。
小品ながらズシリと心に響き、
かつ素晴らしい余韻を残してくれる傑作でした。