Fitzcarraldo

南極物語のFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

南極物語(1983年製作の映画)
3.2
実写映画の中では歴代興行収入の邦画第二位となる実話を基に脚色した蔵原惟繕監督作。

小学生の低学年の頃か?テレビで放送してたのを見た記憶があるのだが、それよりも学研版のマンガの印象の方が強い。

学研まんが名作シリーズ
『タロ・ジロは生きていた 南極物語』
(1983)
キャラクターデザイン・構成:石森章太郎
漫画:シュガー佐藤

久しぶりに映画を見返してみると、どうも学研版のマンガの方が恋しくなりAmazonで検索してみると、49,920円のプレミア価格になっていて驚く。

おいおいウソだろ?なんでこんな高額なんだ?石森章太郎が絡んでるからか?しかし高すぎるだろ?

そうか…よく考えたら30年以上も前になるのか…30年も前ならもうヴィンテージになるのか…こんな跳ね上がるなら、捨てなきゃよかった。確か持ってたと思うけど…。


全編を通して印象的な音楽を担当したのは"Blade Runner"(1982)や、日韓同時開催となった2002 FIFA World Cupの公式アンセムを担当したVangelis。

公式アンセムはオリコンのシングルベスト10にも入っていたが、この作曲者と南極物語が当時は繋がらなかった。いま聴き比べてみると確かに似ている。

久しぶりに公式アンセムを聴いたが、やっぱりいい曲である。それに比べて、東京五輪2020のNHK公式テーマソングは嵐の『カイト』…日本だけが成長を止め、失われた20年、いや失われた30年の暗黒世界から未だ脱け出せない。

音楽をVangelisに頼める力と金があった80年代、ジャパンアズナンバーワンと調子に乗りまくってバブルへと向かう景気の良さを感じられる。


実在の人物である菊池徹をモデルにした潮田を演じた高倉健。

実在の人物である北村泰一をモデルにした越智を演じた渡瀬恒彦。


アナウンス
「宗谷乗組員の皆様、並びに観測隊員の諸君。誠に残念、且つ口惜しいことでありますが、天候の好転が見込めず、また宗谷の航行能力も限界に達し、第二次越冬は断念やむなきに至りました。昭和基地は放棄」

このアナウンスを聞き、潮田と越智の2人が本部へ乗り込む。

越智
「隊長!犬、イヌ見捨てるんですか?」

隊長
「越智くん、もうよしたまえ。みんなできる限りのことはしたんだよ」

越智
「お願いします。あと2回、あと2回、飛ばして下さい!そしたら全部の犬収容できるんです!」

お偉いさん?
「この天候じゃ無理ですよ」

潮田
「じゃーあと1回だけ!…あといっぺん飛ばしてくれませんか?」

越智
「1回じゃ無理です!全部で500kg超えます!」

潮田
「それでも飛びたいんです!」

潮田を演じる高倉健のド級の圧に押されて押し黙る一同。

徐ろにポケットから包みを取り出し、その中のモノを机に置く潮田。

潮田
「……殺してきます…他に…責任を取る方法がありますでしょうか?」

この演技…どっしりとした静かな演技だが、自身の葛藤がギュンギュンに伝わる熱い芝居につい泣けてしまう。

これは高倉健のお家芸だろう。

自分の気持ちをグッと抑えつけて、そこから逃げずに真っ向から耐えて…それでも、最低限の、ここだけは譲れないというものだけを前面に出す。

この芝居だけで涙が出てしまった。

これは高倉健の誠実な人柄に依るところが多い気がする。ザ・高倉健である。


お偉方の1人
「本船の飲料水がもうギリギリなんですよ」

上の人
「増水器にこれ以上、燃料を使用することはできないんだよ」

隊長
「ケープタウンまで帰るのにギリギリなんだよ」

潮田
「…水がないんじゃ、しょうがないですね」

顔のシワ…いい顔しとるわ。
年輪の厚みが表情から読み取れる。

この厚みというのか、重みというのか…
これを今の役者は表現できない。
どうも軽い。

撮り方や台詞の所為もあるかもしんないけど…

モデルになった菊池徹は、
「最後のヘリで基地に自分を連れて行って、そこで犬と一緒に自分も置き去りにしてくれ」と言ったそうな…



ドッグトレーナー
宮 忠臣

置き去りにされたイヌたち。

犬は演技なんてできないよね?
首輪抜けは、どうやってやらせてんの?
訓練で抜けるようになるの?

エサを抜いて極限の状態にさせて、自然と逃げるように仕向けたりしてないよね?それならパワハラだよね?お芝居だからと自覚なんてできないもんね…首輪抜けするシーンはパワハラにしか感じない。

これは現在だと放送できない気がする。



デリーがクラックに落ちて死んでしまうシーン。急にスタジオになったな…

オーロラも急に偽物だしスタジオだし。

本物と偽物の差が大きいと目立ってしまうので、できれば偽物は使わない方がいい。




おぉ…夏目雅子。
妖艶な美しさ。
しかし、急にアフレコみたいな音声になるのは気持ち悪いなぁ。声だけが浮いてしまってバランス悪いで。

夏目雅子
「言うこと聞かへんと、結婚してあげへんよ」

おぉ…夏目雅子の京弁。
なんともいえんエロさがある。



大学の職を辞して、樺太犬提供者へ謝罪行脚の旅へ出る潮田。

謝罪をする度に、相手先に子犬を渡す。

せめてもの罪滅ぼしの気持ちで子犬を渡してるんだろうけど、相手の気持ちも聞かないで強引に渡してるので、それは違うでしょ?

謝罪をして、和解できたその結果、欲しいと言われて、ようやくあげるという順を踏まないと。

申し訳ない

子犬を渡す

失礼する

これでは傲慢だろう。本当に謝ってるのかどうかさえ微妙に見えてしまう。



リキ、シャチの襲撃で重傷を負う。
このフラフラと歩く演技どうやってんの?めちゃくちゃうまいんだけど…実際に脚を傷つけてないよね?なんで、びっこひけるの?こんなこと教えたらできるの?

助演男優賞でしょ?!


古代より脈々と繋がる人間と犬の関係。

ラストの高倉健の顔にまた泣かされてしまう…いい顔するよなぁ。この重厚さは何だろう?どこから来るのか?

潮田のモデルとなった菊池自身は、タロとジロの生存を確認した第三次南極地域観測隊の隊員ではなかったらしい…
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