柏エシディシ

籠の中の乙女の柏エシディシのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.0
ヨルゴス・ランティモスの名前が日本の映画ファンに最初に認識された作品じゃないかな。
「哀れなるものたち」からの復習編。
冒頭から何の説明もなく、ある家族の日常が淡々と映し続ける。
が、この家族どこか…いや、だいぶヘン!
音楽無し、定点カメラの撮影がドキュメンタリーや盗み撮りの感覚に陥らせて妙なリアリティと諧謔性を味合わせてくれる。
ちょっとしたifというか思考実験を映像化してみせて、観るもののや社会の価値観や道徳性に揺さぶりをかけてくるランティモスの個性が初期のこの作品からもう既に全開。
カルトやホームスクールなどのある限定された環境下での教育や情報の重要性と危険性に限らず、果たして、私たち一人ひとりの属する、何の変哲もない家庭や会社などの共同体もこういう事と無縁では無い、という問い掛け。
そして、そこを打破する切っ掛けが"映画"=アートであるというステイトメント。
タイトルや内容に直接言及することなくとも、台詞と人物の行動でどの作品か判る超有名作品をセレクトするランティモスのユーモア。
凡百のアート系映画とランティモスの違いはそのチャーミングさだと再確認。
誕生日会のダンスは、「哀れなるものたち」のベラのダンスと重なる。
束縛に抗い、内なる衝動に導かれるままに心と体を揺さぶれ!
柏エシディシ

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