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籠の中の乙女の8bitのレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
3.8
異常な世界。

3人の子供を、生まれた時から自宅の敷地内から一歩も出さずに育てる両親。
どうやら過去に子供を亡くしているらしく、それがトラウマとなり常軌を逸した過保護となってしまったようです。
人里離れた山奥の邸宅は高い壁に囲われ、
会社を経営する父親だけがベンツで外界に出ることができます。
「海」「高速道路」「電話」といった外界を想起させる単語は、「椅子」「風」「塩」などとまったく別の意味として教育され、「ゾンビって何?」と聞かれた日には「小さくて黄色いお花よ」と教える始末。
成人に近い長男には性のめざめが訪れ、
父親は自分の会社で働く警備員の女性を金で雇い、長男の性処理の相手としてあてがいます。
この外界の女性が家庭に闖入したことでこの閉ざされた世界が徐々にバランスを崩してゆきます。
それを悟った父親は外界へのガードをさらに強固にし、子供たちをほとんど飼い犬同然のように支配してゆきます。
「犬歯(Dogtooth)が抜けたら外に出れる」という父親の言葉に姉は…というとてつもない独創性を持った不気味な作品でした。

ミヒャエル・ハネケの作品を思わせるような淡々とした語り口で、ジメジメとした雰囲気もなくあくまで清潔感を強調しています。
その異常なまで清潔感が逆にリアリティを感じさせ、もしかしたらこんな家族は世界には結構いるんじゃないかと思わせるような説得力すらあります。

父親の行動が純粋に家族の幸せを願ってというのが怖いです。

姉が又吉に似てる。
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