半兵衛

お国と五平の半兵衛のレビュー・感想・評価

お国と五平(1952年製作の映画)
3.6
夫の仇討ちに出た妻・お国と従者・五平が旅をしていくうちに互いに惚れあっていることに気づくという、成瀬監督らしいメロドラマ要素満載の変な時代劇。そして時代劇なのに男らしさがなく、出てくる男はほとんど女々しい。でもその変さ加減が妙に愛らしかったりして嫌いになれない。

肝心の仇討ちの標的である友之丞(山村聰)が主人公二人の前にあらわれて彼らがお互いに惚れあっていることを察して二人に「そんなに想い合っているのなら付き合って仇討ちなんかやめちゃえよ!」と揺さぶりをかけ命を助けてもらおうとするという普通の時代劇にはない不思議な風景が見られる、でもそれが武士という男性社会のモラルを崩壊させ「男なんてみな内面が女々しい奴らばかりなんだよ」というメッセージが彼らの行動から伝わってくる。その最も足るものがお国と夫の部下である五平が結ばれてしまう展開で、武士道というモラルが壊れていくようで妙に痛快だったりする。

そんな不可思議な関係の三人による結末は仇討ち映画らしく終わるが、面子にこだわるあまり女をないがしろにしがちな男のどうしようもなさと女の芯の強さが感じられるのがいかにも成瀬作品らしい。

元が舞台なためかいかにも狭い風景でやっている感じで映像としての広さが無い点が気になる。あとチャンバラに慣れていない監督のせいか殺陣シーンがちょっとぎこちない。
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