ユウ

スピーシーズ2のユウのレビュー・感想・評価

スピーシーズ2(1998年製作の映画)
4.4
エイリアンのデザインを担当したH・R・ギーガーの手がけるクリーチャーが人類を脅かす映画。
しかし、一宇宙船や地球外のハピタブル天体が舞台となるエイリアンシリーズと異なり、(制作当時程度の)地球を舞台とする。
そして前作のスピーシーズ、シルは雌であったため、幸い繁殖能力(侵略能力)に限度があり、事実、出産という無防備な状況を狙われ殲滅された。

だが今作の侵略個体パトリックは雄であり繁殖能力が高く、単体の戦闘力もはるかに高い。おまけに頭を吹き飛ばされようが両断されようが瞬時に再生するなど、不死性まで上がっている。頭部両断に至っては、むしろ双頭になりかえって攻撃性が増す始末。(負担が大きいのかすぐに頭を一本に戻すが)

前作のシルが、いわゆる暗黒の森仮説(※)的なトラップとそのトラップによる実験生物であったのに対し、今作は元々人間のパトリックが宇宙探査を機にエイリアンに感染し、変異するという発生プロセスを踏んでいる。その性質上、侵略側のより強い加害意識が見て取れる。
だが感染したパトリック本人は当初、自身が変異した自覚がなく、最初の子供と最初の犠牲者を目の当たりにし怪物となった自分に絶望してショットガン自殺を図る。
だが、凄まじい再生能力を持っているため瞬く間に吹き飛んだ頭部は再生し、思考的、精神的にも完全なエイリアンとして生まれ変わる。

対するは前作で生還したシル討伐チーム。
そこにシルのクローンであるイヴを加え、スピーシーズをもってスピーシーズを制すという方向に舵を切ろうとする。
イヴは本能である侵略(生殖)を抑え込むよう教育されているが、元が元であるため味方でありながら大変危険な存在である。

パトリックは討伐チームがイヴの扱いについて逡巡するわずかな間に大量の子供を作り、着実に侵略を進めていく。
ちなみに彼の子供を身籠った女性はエイリアンのチェストバスターの要領で凄惨な最期を遂げる。
また、パトリックと共に宇宙へ行っていた他クルーもスピーシーズに感染している事や、イヴのテレパシー能力によりパトリックが侵略を進めている事実が判明する。
討伐チームは結局イヴの効率的で安全な運用方法を見出せないまま、イヴの侵略本能の暴走という最悪のきっかけにより、スピーシーズ殲滅の旅路へ着くこととなった。



複雑なエイリアンの生態を視覚的にわかりやすく描写しており、続編であるという世界観上の下地も構築されているため、物語のテンポが良く、より深い没入感をもたらしている。
見応えのある名作である。……と締めくくりたいのだが、日本では今ひとつ奮っていない作品だ。(そもそもスピーシーズに続編があること自体があまり知られていない気がする)

最後に一言、R-TYPEみたいな映画だな!!

(※暗黒の森仮説とは、宇宙で目立つ行動を取る知性体が現れると、より高度な知性体に滅ぼされるというもの。フェルミのパラドクスに対する一つの解法。)
ユウ

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